日本初! 足専門の総合病院「下北沢病院」(東京・世田谷区)。同院に所属する医師たちが、足を健康に保つ“健足術”を解説する連載。今回のテーマは「年を重ねても歩き続けるために、今実践すべきこと」。足に余分な負担をかけずに歩き続けるためにはアキレス腱の柔軟性を保ち、お尻や脚の筋力低下を防ぐことが大切です。そのための方法を理学療法士のふたりに聞きました。
年を重ねても、歩き続けたいなら、どのような対策をすればいいか――。
人間は、「歩く」ことによって、自分自身の体を“移動”させ、好きなところに行くことができる。「歩く」とは、人間の“移動機能”の一つだ。
ロコモ(ロコモティブシンドローム=運動器症候群)という言葉を聞いたことがあるだろう。これは、骨や筋肉などが衰え、この「歩く」などの“移動機能”が低下している状態、と説明される。つまり歩く力が落ちてしまった状態。では、この「歩く力」を保つためには、どうしたらいいのだろうか。
まずはアキレス腱の柔軟性を確認
「一日の歩数を担保することを気にされる方が多いようですが、毎日たくさん歩けば『歩く力』が落ちないというわけではありません。『歩く力』の基盤として大切にしていきたいのは、アキレス腱の柔軟性と脚の筋力です」と、足を専門的に治療する総合病院、下北沢病院の理学療法士・武田直人さんは話す。武田さんが薦める2つのチェックをやってみよう。「アキレス腱伸ばし」はともかく、「片脚立ち」ができなくなっている“ロコモ予備軍”の人もいるはずだ。
アキレス腱は、この連載で何度も取り上げてきた、足の健康を左右する存在だ。
「アキレス腱が柔らかければ、歩行時にすねが十分に前に倒れます。これによって、足のアーチが保ちやすく、足の前側にかかる負担を減らせます。しかし、アキレス腱が硬いと、すねの骨が十分に前に倒れないため、足にも負担ですし、ひざや股関節などにもトラブルが起きやすくなります」(武田さん)。
歩くための 体の機能、落ちていませんか?
2つの動き でチェック
1 |
すねが前に倒れる? 柔軟性CHECK |
まずアキレス腱がしっかり伸ばせるかチェック。アキレス腱が硬いと、歩くときに、すねの骨が十分に前に倒れない。そのため、足の前側に負担がかかり、足のトラブルのもとになる。

伸ばしたい方の足を一歩後ろに下げ、「アキレス腱伸ばし」。すねが直立の状態から10度以上前傾できていない場合、腱が硬いということに。
アキレス腱を伸ばすときは、伸ばしたい足を一歩後ろに下げて、前に出ている足のひざをゆっくり曲げていく。同院の理学療法士の関希未さんは言う。
「『できている』という人でも後ろ足の向きが開いていることもあります。こうなると、実はすねは倒れやすいんです。だから、ひざと足の人差し指は正面を向いているよう、心がけてください。その状態で伸ばした足のすねが、前に10度以上倒れないのであれば、アキレス腱が硬いということになります」
アキレス腱伸ばしは、硬さチェックでもあり、「歩く力」を落とさないためのセルフケアにもなる。アキレス腱が硬い人は、日々の生活に取り入れるようにしよう。
「かかとからふくらはぎをつなぐアキレス腱を意識しながら、ゆっくり伸ばして、1分キープ。そのあと足を入れ替えて、反対側の足も伸ばします。普段からストレッチを心がければ、柔軟性の改善につながります」(関さん)。
実は、アキレス腱は硬くなりやすいのだという。「アキレス腱は、人体の中でも非常に太い腱で、加齢によって硬くなるなど変化が起きやすいとされています。だからこそ、定期的にチェックすることが大切です」(武田さん)。
この記事の概要
