日本初! 足専門の総合病院「下北沢病院」(東京・世田谷区)。同院に所属する医師たちが、足を健康に保つ“健足術”を解説する連載。今回のテーマは「脚の血管」。静脈の病気である「下肢静脈瘤」や、脚の血管の動脈硬化を防ぐために、始めるべきセルフケアを聞きました。
足を専門的に診察する総合病院、下北沢病院。その副院長である長﨑和仁さんは、血管外科医として、「脚の血管」の病気を診ている。
「心臓や脳では、血管の病気といえば、動脈が中心です。しかし、脚の血管では、動脈だけでなく静脈の病気も多く、それぞれの血管の“特徴”に基づく病気が起こります」と語る。

動脈も静脈も「詰まる」だが原因が異なる
その“特徴”はこうだ。
まず、心臓から送り出された血液を体のすみずみまで送り届ける「動脈」。血液の強い圧に耐えられるよう、壁は厚くなっており、流れる血液は栄養たっぷりだ。
そのため、「壁に粥腫(じゅくしゅ)という脂質などが固まった塊ができやすい。動脈硬化の一つで、これが脚の血管で起こるのが、『下肢閉塞性動脈硬化症(かしへいそくせいどうみゃくこうかしょう)』。圧倒的に男性に多い病気です」(長﨑さん)。
脚の動脈が動脈硬化になると… 下肢閉塞性動脈硬化症 に
「動脈硬化」にはいくつか種類があるが、典型的なのが、内膜にコレステロールなどの脂質がたまり、「粥腫(じゅくしゅ)」という膨らみができた状態「粥状動脈硬化」。これにより血管が狭くなったり、詰まったりして、血流が悪くなる。脚で起こった場合、足先まで栄養や酸素を十分に送ることができない「下肢閉塞性動脈硬化症」に。足の冷えやしびれが起きる。 |
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逆に、血液を心臓に戻す役割がある「静脈」はどうだろうか。静脈内の血圧は、動脈よりはるかに低いため、壁は薄く柔らかい。その一方で、内側に血液の逆流を防ぐ、ハの字形の「静脈弁」がついている。
「この弁が壊れて、血液が一部にたまって、瘤(こぶ)のようになるのが『下肢静脈瘤』。静脈の壁が柔らかいからこそ、血液がたまり、瘤になるのでしょう」(長﨑さん)。
動脈では心臓のポンプ作用で血液が送られるが、静脈で心臓の代わりをしているのが脚の筋肉。脚を動かすことによる筋肉のポンプ作用で、静脈の血液が押し上げられる。このことは知っている人も多いだろう。
だが、長時間座ったままだと、そのポンプ作用が起こらない。そのため、静脈内で血液が停滞し、血液が固まり、血栓ができてしまう。これを「深部静脈血栓症」という。