下北沢病院連載2回目は「扁平足」。“足のアーチ”は、年とともに落ち、扁平足になりやすくなります。これは、さまざまな足トラブルの原因に。セルフケアを覚えましょう。
足を専門的に治療する総合病院、下北沢病院。同院の足病総合センター長の菊池恭太さんは整形外科医として、かつて糖尿病患者の足の切断を目の当たりにしてきたという。
そんな深刻な事態を未然に防ぎたいと、菊池さんは米国の足病学(ポダイアトリー)を学び、その考えを生かし、診察にあたっている。
健やかな足を保つにはどんなことに気をつければいいのか。菊池さんが強調するのが「足のアーチを崩さないこと」だ。
立つためでなく「歩く」ための足
下図のように、ヒトの足には3つのアーチがある。かかとと親指の付け根を結ぶ「内側の縦アーチ」、かかとと小指の付け根を結ぶ「外側の縦アーチ」、そして指の付け根を結ぶ「横アーチ」だ。ヒトの足は、このようなアーチ構造を持つことで全身の体重を支え、着地時の衝撃を受け止めている。
ヒトの足にある3つのアーチ
加齢とともに 内側の縦アーチ が落ち扁平足になりやすい
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内側の縦アーチ かかとと親指の付け根を結ぶ内側の縦アーチ。ここが落ちることで扁平足に。加齢とともに落ちやすい。 |
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外側の縦アーチ かかとと小指の付け根を結ぶ外側の縦アーチ。低いアーチで、内側より崩れにくい。崩れると、かかとが外側に倒れやすくなる。 |
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横アーチ 5本の指の付け根を結ぶ。横アーチが落ちると、足の横幅が広がった「開張足(かいちょうそく」に。 |
一方、下図のように、チンパンジーの足は、ヒトの手に近い形態になっている。これを「母趾対向性(ぼしたいこうせい)」という。つまり、親指(母趾)が他の四指と離れ、親指と四指の腹が向かい合わせられる配置となっている。そのため、足で木の枝などにつかまるのに適している。
しかし、「チンパンジーの足は、アーチがないので、長く歩くのには適していない。アーチがあるからこそ、ヒトは長く歩けるようになったのです」と菊池さんは話す。
ヒトの足は親指が小さく 歩くこと に特化している

アーチの存在は古く、360万年前のタンザニア・ラエトリ遺跡で見つかったアファール猿人の足跡の化石には、すでにアーチがあった痕跡が見られるという。人類がこのころから二足歩行していた証しとされる。
「樹上生活や、足で何かをつかむという機能を一切捨てて、平地を歩くということだけに特化していった結果、母趾対向性をなくし、ヒトの足にはアーチが形成されていったのでしょう」。
実は、ただ立っているだけであれば足にそれほど機能性は求められないという。だが、歩くとなると、「足を地面の衝撃から守り、体を前に進めていくのに必要な“アーチ”という構造が重要になってくるのです」。
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