日本初! 足専門の総合病院「下北沢病院」(東京・世田谷区)。同院に所属する医師たちが、足を健康に保つ“健足術”を解説する連載。まずは足の重要性と、最低限続けるべきケアについて紹介します。
最近、いつ自分の「足」を見ただろうか。常に目にする手とは異なり、おざなりにしがちな「足」。しかし、ちょっとした靴ずれでも、歩くたびに痛み、「足」の重要性に気づかされた経験もあるはずだ。
そんな「足」を専門的に治療する、日本初の総合病院があるという。東京・世田谷区の下北沢病院だ。日本では一般に、巻き爪や水虫は皮膚科、外反母趾なら整形外科、下肢静脈瘤は血管外科……など、足の病気が各科にまたがっている。だから、自分で症状から判断し、受診する診療科を決める必要がある。しかし、同院では総合的に「足」を診てもらえるのが特徴。これは米国流だ。
「米国には、足病医(そくびょうい/ポダイアトリスト)という、足を専門に診る医師がいます。眼科は目という臓器を専門的に診るが、それと同様、足を一つの臓器ととらえて診るというわけです」と同院の久道勝也理事長は話す。
米国では一般的な 足病医(ポダイアトリスト)とは?
米国には「足病学(ポダイアトリー)」という、“足”に特化した学問があり、約1万5000人の足病医(ポダイアトリスト)が足に関する診療に従事している。「米国では、靴を長年履いてきた歴史があるうえ、戦争中に歩兵が歩けなくなると戦力が落ちるなどととらえたため発展してきた。一方旧日本軍では『足に靴を合わせるのではなく、靴に足を合わせろ』という根性論であった。そんな日本との文化の違いから、西洋医学が導入された際に足病学が抜け落ちたのではと推測している」(久道理事長)。
久道理事長は十数年前、米国に留学していた際、ある老年内科の医師に助手としてついた。すると、その医師は、必ずといっていいほど、外来を受診した高齢患者さんの診察を足病医に依頼したという。そこで、足病医は、患者さんの「足」に傷がないか、変形はないか、爪の状態はどうかとチェックし、さらに「歩行」動作に問題がないか調べた。
「そのとき、確かに『足』と『歩行』の状態は、人が元気に生きるうえで、非常に重要なファクターだと気づきました。人間は老いて、いろんなことが少しずつできなくなる。医師の目から見ると、多くの人は、人生の最後、3段の階段を下りていくことになります(下図)。まず、骨折などをきっかけに、歩けなくなる。すると自分でトイレに行くことが難しくなり、排せつに他人の力を借りる必要が出てくる。その次に自分で食べることができなくなり、死を迎えます」と久道理事長。
まず、できなくなるのが「歩行」ということになる。「だから、歩行=歩くことを維持できれば、この階段を下り始めるのを遅らせることができるはずです」(久道理事長)。
年齢とともに落ちる機能 まず歩行に問題が出ることから

人生の最後の3つの階段。まず初めに歩行ができなくなり、次に排せつができなくなり、自分で食べられなくなり、死に至る。「歩ける状態を続けることが健康寿命を延ばすために大切だ」(久道理事長)。
では、歩くことを維持するには? 「意外に思われるかもしれませんが、毎日歩き続けることが一番の対策なのです。歩行機能を維持するためには、歩行し続けること。使わなければ、機能は退化します。だから、1日一定の時間をウオーキングに費やしてほしい。歩数にこだわることはありません。快適に痛みなく歩き続けられるなら、どんどん歩きましょう。逆に痛みが出たら無理をせず、休みを入れてください」。
歩くことは足を健康にする 最高の方法

健康な足を維持するには、適切な負荷=歩行が一番。
「足が痛くなるのは、足に過度な負荷がかかっている証拠。そんなときは無理をしないこと」(久道理事長)。