日本初! 足専門の総合病院「下北沢病院」(東京・世田谷区)。同院に所属する医師たちが、足を健康に保つ“健足術”を解説する連載。今回のテーマは「靴選び」。選び方次第で、足に負担がかかってしまう靴。足が変化する50歳以降は特に重要に。足の病院ならではの靴選びのポイントを教わりました。
職場で、フォーマルな場で、女性はさまざまなシーンでヒールの靴を履くことが多い。
「しかしヒールのある靴は、足への負担が非常に大きいのです。下のレントゲン写真でもわかるように、ヒールを履くとかかとがかなり上になり、足全体が前のめりになって、つま先に体重がかかります。そしてつま先はヒールの型に押されて足指がギュッと圧迫されるので、足の関節が徐々に変形することにも。米国のポダイアトリー(足病学)では、足に負担をかけないためにも、ヒールの高さは4cm以下に抑えるのが望ましいとされています」と、足を専門的に治療する総合病院、下北沢病院院長の菊池守さんは話す。
ヒール靴 だとこんな影響がある
ヒール靴では、傾斜の上に立っているようなもの。足の前側に体重がかかるため、タコができたり、前すべりする結果、外反母趾や内反小趾(ないはんしょうし:次ページで説明)にも。また、距骨が不安定になる。

体重を支える要「距骨」に悪影響が
ヒールは、すねの骨の下にある「距骨(きょこつ)」にも影響を及ぼす。
「距骨は最近注目を集めているので、ご存じの方も多いかもしれません。『足』と『脚』とをつなぐ小さな骨で、立ったり歩いたりするときに動作の支点ともなります。上側にすねの脛骨(けいこつ)・腓骨(ひこつ)、前は内くるぶし前の舟状骨(しょうじょうこつ)、後ろはかかとの踵骨(しょうこつ)に挟まれています」(菊池さん)。
この距骨、上から見ると前が広く、後ろが狭くなっている。
「台形のような形をしていて、前側で脛骨・腓骨のソケットのような部分にはまっています。ヒールの靴を履くと、かかとが上がり、足首の関節である『足関節(そくかんせつ)』は底屈(つま先が下がった状態)になります。このとき距骨の後ろは幅が狭く固定されていない分、足首はグラグラと左右に不安定な状態になります」。
ヒール靴で不安定になる 距骨 とは?
足と脚のつなぎ目にある骨。すねのやや太めの「脛骨」、その外側の細い「腓骨」につながる。ヒール靴を履くと、それらとのジョイントが悪くなり、不安定になるため、すねやふくらはぎの筋肉で支える必要が出てくる。

そして足首が不安定な状態で姿勢を真っすぐに保たなければならないので、脚の筋肉に負担がかかる。
「ふくらはぎのふくらみを形成する腓腹筋(ひふくきん)、ふくらはぎの深層にある後脛骨筋(こうけいこつきん)、腓骨の後方を通る腓骨筋(ひこつきん)など、多くの筋肉に緊張を強いるので、脚には疲労がたまります」。