年を取っても認知症にはならず、脳も元気なまま一生を終えたいと誰もが思うでしょう。そのためには何が必要でしょうか? 国立長寿医療研究センターの遠藤英俊さんが、最新の研究結果を基に、認知症予防について解説します。今回は、認知症予防につながる食事とサプリのとり方について。

認知症予防に効果が期待される食品成分として、前々回はカレーの香辛料ターメリック(ウコン)に含まれるクルクミン、前回は柑橘類のシークワーサーに含まれるノビレチンを紹介しました。
しかし、この2つが効果的だからといって、極端な話ですが、毎食カレーとシークワーサーだけを食べていれば、認知症が防げるというわけではありません。認知症予防には単一の成分や栄養素がよいというわけではなく、食事全体を考えていく必要があります。
食事は多様性とバランスが大切
では、どのような食事がよいのでしょうか。
国立長寿医療研究センターの大塚礼氏らは、愛知県内に住む人を対象に、「さまざまな種類の食品を食べている人」と「そうではない人」とに分けて、10年にわたり追跡調査しました。
その結果、この2つのグループの認知機能に差が出たのです。さまざまな食品をとっている人は、そうではない人に比べ、認知機能の低下リスクが44%も抑えられました(*1)。

これだけで厳密に言い切れるわけではないものの、食事を単調なものにするのではなく、なるべく多くの食材を組み合わせた多様性のあるものにすることが、認知症の予防につながるというわけです。
具体的にどのような食品が認知症予防に効果的なのかについては、福岡県久山町を舞台にした九州大学の調査があります。久山町は人口が8600人ほどの町ですが、年齢や職業の分布が日本全体の割合と似ていることから、さまざまな疫学調査が行われてきました。