年を取っても認知症にはならず、脳も元気なまま一生を終えたいと誰もが思うでしょう。そのためには何が必要でしょうか? 国立長寿医療研究センターの遠藤英俊さんが、最新の研究結果を基に、認知症予防について解説します。今回は、認知症の予防効果が期待できる成分である、柑橘類に含まれる「ノビレチン」について。

認知症の予防薬が認可されていない現在、認知症を予防するには、これまでの連載で述べてきたように、40代、50代のうちから、生活習慣、運動、食事を見直すことしかありません。
前回は、認知症予防にうってつけであると注目されている、カレーについて解説しました。カレーに多く含まれる成分であるクルクミンというポリフェノールの一種には、抗酸化作用、抗炎症作用が認められており、これが認知症予防に効くのではないかと考えられています。
今回は、やはり普段の食事のなかで認知症の予防効果が期待できる別の成分として、柑橘類に含まれる「ノビレチン」を紹介しましょう。
柑橘類と認知症発症の関係
今から2年前の2017年5月、認知症予防について非常に興味深い論文が発表されました。
1万3373人の日本人を対象にした東北大学のコホート研究(疫学研究の一つで、ある要因を実施したグループとしないグループとを分けて疾病の発生率を比較する)において、みかんなどの柑橘類が認知症予防に効果があると示されたのです(*1)。
具体的には、柑橘類を食べる頻度が「週に2回以下」の人に比べて、「週に3~4回」食べる人では、認知症を発症するリスクが8%低下、「ほぼ毎日食べている」人では14%も低下していたのです。
では、柑橘類のどのような成分が認知症予防に効果があるのでしょうか。
それが、近年になって「人生100年時代を元気に生き抜くための新成分」として注目されている柑橘フラボノイド(ポリフェノールの一種)の「ノビレチン」です。ノビレチンには、抗酸化作用、抗糖化作用、抗炎症作用があることが知られており、認知症に代表される神経変性疾患に対して、予防・改善効果を期待できることが、さまざまな論文で報告されています。