年を取っても認知症にはならず、脳も元気なまま一生を終えたいと誰もが思うでしょう。そのためには何が必要でしょうか? 国立長寿医療研究センターの遠藤英俊さんが、最新の研究結果を基に、認知症予防について解説します。今回は、認知症予防食として大いに期待できる「カレー」について。

前回までは、認知症予防に効果がある生活習慣や運動について紹介してきました。今回からは、認知症予防が期待される食品や成分について考えていきましょう。
世の中には、「認知症に効く」という食品がよく紹介されていますが、そのなかには科学的根拠があいまいなものも少なくありません。
そんななかにあって、さまざまな論文が発表され、認知症予防にうってつけであると注目されているのがカレーです。
カレーに使われている香辛料の一つで、加えると黄色を出すことができるのがターメリックです。ウコンとも呼ばれており、「二日酔い防止のドリンク」にも使われているのはご存じでしょう。そのターメリックに含まれるクルクミンというポリフェノールの一種には抗酸化作用、抗炎症作用が認められており、これが認知症予防に効くのではないかと考えられているのです。
クルクミンの認知症予防効果については、細胞レベルでの実験、動物実験、疫学調査の3つの面から明らかにされており、かなり期待できるといえます。それぞれの実験や調査について、簡単に紹介していきましょう。
クルクミンがアミロイドβの凝集を防ぐ
認知症の進行については、この連載の第2回で説明したように、「アミロイドβの蓄積」「神経細胞の破壊」、そして「臨床症状の出現」という順に進んでいきます。

このうち、アミロイドβの蓄積を阻む成分として、クルクミンが注目されているのです。
ちょっと専門的な話になりますが、培養細胞系において、APP(Amyloid-beta Precursor Protein)と呼ばれるアミロイド前躯体タンパク質を混ぜて温めていくと、やがて不溶性のアミロイドβの固まりが生成されます。
ところが、ここに初めからクルクミンを混ぜていくと凝集しにくいということが、複数の実験で分かってきました(*1)。