年を取っても認知症にはならず、脳も元気なまま一生を終えたいと誰もが思うでしょう。そのためには何が必要でしょうか? 国立長寿医療研究センターの遠藤英俊さんが、最新の研究結果を基に、認知症予防について解説します。今回は、認知症予防の効果が期待できる有酸素運動とコグニサイズについて。
週3回、30分の早歩きで頭が良くなる?
前回は、40~60代における生活習慣病の予防が、将来の認知症予防につながることを解説しました。今回は、積極的な認知症予防の方法として、運動について最新の研究報告を交えて紹介していくことにしましょう。
ひと口に運動といっても、さまざまな種類があり、それぞれに効果がありますが、認知症の予防につながる効果がはっきりと報告されているのは、有酸素運動です。
ご存じのように、有酸素運動とは、ウォーキング、ジョギング、エアロビクスなど、それほど強すぎない力を長時間筋肉にかけ続ける運動のことです。
海外の論文ですが、認知症を発症していない高齢者4615人を5年間追跡調査した結果、歩行よりも強い有酸素運動を週3日以上行っていた人たちは、そうでない人たちに比べて、軽度認知障害(MCI)、アルツハイマー型認知症、全認知症を発症するリスクが、いずれも有意に低いことがわかりました(*1)。
では、有酸素運動によって、なぜ認知症が予防できるのでしょうか。それには、いくつかの理由が考えられます。一つは、筋肉を動かすことによって心拍数が増え、脳の血流が増えるためでしょう。
もう一つ重要なのは、有酸素運動をすることで、BDNF(脳由来神経栄養因子)というたんぱく質の一種が、脳内で生成されることです。
以前は、脳の神経細胞はある程度の年齢に達すると増えることはないといわれていました。しかし、BDNFが活性化することで、脳の神経細胞の数やネットワークが増えることが分かってきました。
つまり、有酸素運動をすると高齢者でも頭が良くなるかもしれないということです。
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