年を取っても認知症にはならず、脳も元気なまま一生を終えたいと誰もが思うでしょう。そのためには何が必要でしょうか? 聖路加国際大学臨床教授の遠藤英俊さんが、最新の研究結果を基に、認知症予防について解説します。今回は、アルツハイマー病以外の認知症の原因疾患についてまとめます。

認知症とその予防について、さまざまな角度からお伝えしてきたこの連載も、いよいよ最終回となりました。これまでのおさらいを兼ねて、改めて認知症とはどういうものなのか、その原因になる病気についてまとめてみましょう。
「認知症」は病名ではない
一般には、「認知症」という名前の病気があると捉えられているようですが、認知症は病名ではありません。認知症というのは、あくまでも記憶や知覚などの認知機能が低下した状態を指す言葉です。
具体的にいうと、「さまざまな原因疾患によって認知機能が低下し、生活に支障が出ている状態が6カ月以上継続している」場合に、認知症と診断されます。
似たような症状として、高齢者によく見られる「せん妄」がありますが、せん妄は一過性のものである点が大きく違います。
認知症を引き起こす原因疾患として最も多いのが、この連載で主に取り上げてきたアルツハイマー病です。これまでも説明してきたように、アルツハイマー病は突然起こる病気ではありません。認知症を発症する何十年も前から、次の1~3の順を追って少しずつ進行していくのが特徴です。
- 1.臨床症状がない時期
- アミロイドβが脳内に徐々に蓄積していく状態。
- 2.軽度認知障害(MCI)
- タウ(タウ・たんぱく質)の異常蓄積によって神経細胞の死滅が進行。
- 3.認知症が発症
- 脳の海馬周辺に主病変が生じ、大脳新皮質にも進展。
この1~3の全体が「アルツハイマー病」であり、その進行によって3の段階で発症するのが「認知症」です。そして、アルツハイマー病によって引き起こされる認知症を、「アルツハイマー型認知症」と呼んでいるわけです。
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