年を取っても認知症にはならず、脳も元気なまま一生を終えたいと誰もが思うでしょう。そのためには何が必要でしょうか? 国立長寿医療研究センターの遠藤英俊さんが、最新の研究結果を基に、認知症予防について解説します。今回は、実際に認知症の兆候が自分もしくは家族に出てきたときにどうすればいいか、について。

認知症は、誰にとっても無縁な病気ではありません。誰もが認知症を発症する可能性があります。そこで今回は、自分自身や家族に認知症が疑われる症状が出てきたとき、どのような対処をすればよいか、またどのように診断や支援が進められるのかを紹介しましょう。
実際に症状が出てきたときにあわてないよう、あらかじめ知っておくことは大切です。あせらずに的確な対処をすれば、それだけ進行を抑えることも可能になり、その後のケアに対する負担が軽くなるからです。
もの忘れが多くなったら「もの忘れ外来」や「認知症ドック」
以前、この連載の第3回で、認知症の予備軍である軽度認知障害(MCI)について紹介しました。MCIが認知症と大きく違うのは、もの忘れが頻繁に起こるなどの記憶障害を本人や家族が自覚しているけれども、日常生活には支障がなく、車の運転も料理もでき、介護を必要としていないという点です。
MCIの状態のまま放置していると、1年間で約10%、5年間で約50%もの人が認知症を発症するという報告があります。一方で、適切な対処をすれば、MCIの状態から健常な状態へ戻る人も一定の割合でいます。ですから、自分自身や家族が、「年相応のもの忘れのレベルではなく、ちょっと心配だ」と感じたら、早めにかかりつけ医や専門医に相談することをお勧めします。
専門医に相談するのであれば、「もの忘れ外来」「認知症外来」を設けている病院やクリニックがいいでしょう。ネットで検索すれば、これらが設置されている全国の医療機関を調べることができます。そこへ行くと、問診や神経心理検査などを通じて、MCIかどうかを診断します。
また、50~60代で将来の認知症発症が心配という人は、「認知症ドック」を受けるという方法もあります。やはり、ネットで検索すれば、認知症ドックを実施している医療機関が見つけられます。