年を取っても認知症にはならず、脳も元気なまま一生を終えたいと誰もが思うでしょう。そのためには何が必要でしょうか? 現在の医学では認知症を完全に治すことはできませんが、予防したり、進行を遅くしたりすることは、大いに期待できます。認知症の予防に詳しく、テレビなどメディアでも活躍する、国立長寿医療研究センターの遠藤英俊さんが、最新の研究結果を基に解説します!
今、日本では、認知症の患者さんが増えています。高齢人口が増加しているのですから、認知症の患者が増えるのは当然だと思う方が多いでしょう。事実、内閣府が発表した『高齢社会白書』によれば、2012年に65歳以上の認知症患者数が462万人だったのに対して、2025年には約700万人となり、5人に1人が認知症になると見込まれています。
欧米では認知症患者が減っている

ところが、そんな“常識”をくつがえす研究結果が、欧米で相次いで発表されています。
2017年1月、米ミシガン大学のグループが報告したところによれば、アメリカにおける65歳以上の認知症患者の有病率が、2000年の11.6%から2012年には8.6%と有意に低下していました(*1)。12年間に2割を超える減少です。
同じような研究結果は、アメリカだけでなく、イギリス(*2)、オランダ(*3)などからも報告されています。もちろん、これらの国々でも日本と同様に高齢化が進んでいます。それでも、認知症患者が減っているのはなぜでしょうか。
実は、ここに認知症に対する認識を改めるカギがあります。一般に、認知症は防ぐことができない病気と考えられているかもしれませんが、欧米の研究結果を詳しく分析することによって、ある程度予防することが可能であると分かってきたのです。
この連載では、これまであまり語られてこなかった、認知症予防のさまざまな面について紹介していくことにしましょう。
*2 Lancet. 2013; 382: 1405-12.
*3 Neurology. 2012; 78: 1456-63.
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