健康で長生きするためには、腸内環境を整えることが大事。では、具体的にどうすれば、腸を元気にして、健康“腸”寿を実現できるのでしょうか? この連載では、これまで約4万人の腸を診てきた腸のエキスパートであり、腸に関する数多くの著書を手掛ける消化器内科医の松生恒夫さんが、腸を元気にして長生きするための食事や生活の秘訣を、エビデンス(科学的根拠)に照らしながら紹介していきます。今回のテーマは「底冷え症候群」です。
気温5度以下の「底冷えの日」に要注意
年末が近づき、寒さが増してきましたね。この連載では過去にも「冷え」をテーマに取り上げてきました。その中で、「気温差10度の法則」をお伝えしたのを覚えていらっしゃるでしょうか(詳しくはこちら)。
1日の中で気温の変動が10度以上になったり、冷暖房の使用で屋内外の温度差が10度以上になったりすると、自律神経の働きがその変化に追いつかず、腸への負担が増してきます。私はこうした傾向を「気温差10度の法則」と呼んでいます。
私のクリニックの便秘外来を訪れる患者さんの統計では、屋外と屋内の気温に10度以上の急激な差が出てくると、定常な気温のときに比べて、便秘の患者さんが約3倍に増えていました。
数十年前の冬を思い出してみると、家庭の暖房器具といえば、ストーブとコタツくらいのものでした。しかし、今ではそれ以外にも、エアコン、各種ヒーター、床暖房にホットカーペットと、さまざまな暖房器具が普及しています。
そのために、冬の外気温自体は昔より高くなっているものの、屋内外の温度差が大きくなっていることが多いようです。
私は近年、こうした気候や気温の変化が、人の健康、特に腸の健康にもたらす影響について関心を持ち、独自に調査・研究をしてきました。その中で「気温差10度の法則」を見いだしたのですが、冬季に関してはさらに、一定の条件下で、冷えによる腸への悪影響が増すことに気づきました。
最高気温が5度以下になる、いわゆる底冷えの日が多くなると、腸の働きが低下する停滞腸や、停滞腸にともなう便秘を訴える人が一層増えてくるのです。私はそうした傾向を「底冷え症候群」と名付けました。
北日本では、晩秋から春先まで、最高気温が5度を下回る日がたびたびあるでしょう。東日本や西日本でも、真冬に最高気温が5度を下回る日は何度か訪れます。寒さがさらに厳しくなってきた時に、底冷え症候群にならないように、今からしっかり対策をしていきましょう。

お腹を右から左へ、手の平で軽くプッシュ!
底冷え症候群の対策の1つとして、ぜひ取り入れていただきたいのが「腸ストレッチ」です。以前にも、停滞腸の解消法として「腸マッサージ」をご紹介しましたが、腸ストレッチはその腸マッサージを基本として、さらに実践しやすくしたものです。