健康で長生きするためには、腸内環境を整えることが大事。では、具体的にどうすれば、腸を元気にして、健康“腸”寿を実現できるのでしょうか? この連載では、これまで約4万人の腸を診てきた腸のエキスパートであり、腸に関する数多くの著書を手掛ける消化器内科医の松生恒夫さんが、腸を元気にして長生きするための食事や生活の秘訣を、エビデンス(科学的根拠)に照らしながら紹介していきます。今回のテーマは「菜食主義」です。
ビートルズのメンバーが実践していた菜食スタイルとは?
近年は健康のためだけでなく、地球環境問題への意識の高まりなどから、ベジタリアンやヴィーガンといった菜食主義を、ライフスタイルとして実践する人が増えています。
その先駆者ともいえるのが、英国のリバプールで誕生した伝説的ロックバンド「The Beatles(以下、ビートルズ)」です。ビートルズはジョン・レノン、ジョージ・ハリスン、ポール・マッカートニー、リンゴ・スターの4人組で、1962年にレコードデビュー。1970年に事実上の解散となったものの、半世紀を経た今もなお、世界中の人々に愛されています。
実は、私自身もその1人。小学生の頃から海外のポップミュージックに憧れて、ビートルズの存在を知るやいなや大ファンとなって以来、ビートルズフリークを自認しています。
医学の道に進んでからも、ビートルズに関する情報収集を続け、2006年には『ビートルズでおなかスッキリー胃腸のはたらきを改善する音楽療法』(法研、現在は品切れ)というCD付きの本を出版。そして、2020年6月には、『ビートルズの食卓』(グスコー出版)を上梓しました。
ビートルズの音楽ではなく「食生活」をテーマにした一風変わった本書では、彼らが実践していた菜食主義や自然食療法などにまつわるエピソードを紹介しながら、野菜を中心とした健康的な食事について考察しています。
今回は、ビートルズの食生活を交えつつ、多様な菜食スタイルを解説するとともに、健康のために菜食を上手に取り入れるコツをお話ししたいと思います(文中敬称略)。

「ベジタリアン」といっても種類はいろいろ
ビートルズの4人のメンバーのうち、ジョン・レノンは1980年12月に米国のニューヨークで銃撃され、40歳の若さで無念の死を遂げています。2001年にはジョージ・ハリスンが闘病の末、死去しました。58歳でした。
しかし、ポール・マッカートニーとリンゴ・スターは今も健在で、ポールは今年78歳、リンゴは80歳になりましたが、精力的に音楽活動を続けています。私はその背景には、野菜中心の食生活も大きく影響しているのではないかと思っています。