健康で長生きするためには、腸内環境を整えることが大事。では、具体的にどうすれば、腸を元気にして、健康“腸”寿を実現できるのでしょうか? この連載では、これまで約4万人の腸を診てきた腸のエキスパートであり、腸に関する数多くの著書を手掛ける消化器内科医の松生恒夫さんが、腸を元気にして長生きするための食事や生活の秘訣を、エビデンス(科学的根拠)に照らしながら紹介していきます。今回のテーマは「グルタミン」です。
新型コロナウイルスの感染拡大により、2020年の夏は、手洗いや手指の消毒、マスクの着用、「三密(密閉空間・密集場所・密接場面)」の回避などの予防策が求められ、例年とは違った過ごし方を余儀なくされました。厳しい暑さに加えてそうした生活が続く中で、体力が落ちて夏バテしたり、疲れやストレスがたまったりしている人も多いのではないでしょうか。
体力の低下や疲労・ストレスの蓄積は、病気から体を守る免疫力の低下につながります。収束の見通しが立たないコロナ禍では、免疫力を高めておくことが大切です。
免疫の中心的な役割を担うリンパ球の約6割は、小腸に集中しているといわれています。つまり、免疫力をアップするには、十分な睡眠や適度な運動に加えて、腸内環境を整えて腸の免疫を高めることが重要なのです。
そこで今回は、腸のエネルギー源となり、免疫細胞の強化を促す「グルタミン」についてお話ししたいと思います。

大腸の一番のエネルギー源は「酪酸」
この連載の第4回(食物繊維不足は「停滞腸」「ヨゴレ腸」を引き起こす!)で、食物繊維は腸のエネルギー源として欠かせないものだとお話ししました。それは、食物繊維の一部が腸内の善玉菌によって分解されて、短鎖脂肪酸が産生されるからです。
短鎖脂肪酸の一種である酪酸は、大腸の一番のエネルギー源となり、小腸でも2番目のエネルギー源となります。
善玉菌が食物繊維を分解して、短鎖脂肪酸が産生される一連の仕組みを「腸内発酵」といいます。この腸内発酵を促す食物繊維は発酵性食物繊維と呼ばれています。
食物繊維には不溶性食物繊維と水溶性食物繊維がありますが、酪酸を産生しやすいのは水溶性食物繊維です。そのため、水溶性食物繊維のことを指して発酵性食物繊維と呼ぶこともあります。
発酵性食物繊維は、全粒小麦や小麦ブラン(ふすま)、大麦、もち麦といった穀類や、こんぶやわかめなどの海藻類、ごぼうなどの根菜類、キウイフルーツなどの果物からとることができます。