健康で長生きするためには、腸内環境を整えることが大事。では、具体的にどうすれば、腸を元気にして、健康“腸”寿を実現できるのでしょうか? この連載では、これまで約4万人の腸を診てきた腸のエキスパートであり、腸に関する数多くの著書を手掛ける消化器内科医の松生恒夫さんが、腸を元気にして長生きするための食事や生活の秘訣を、エビデンス(科学的根拠)に照らしながら紹介していきます。今回のテーマは「下剤や便秘向けサプリの落とし穴」です。
前回は、お腹の張りや残便感のもととなる停滞腸について解説しました。腸の働きが低下することで起こる停滞腸は、腹痛や便秘、下痢などの腸トラブルを引き起こします。停滞腸は基本的には、不足しがちな食物繊維や植物性乳酸菌を積極的に取るなど、生活習慣を見直すことで改善していきます。
しかし、停滞腸が悪化して便秘になってしまうと、「便秘にいい」とされる市販の下剤やサプリメントなどに頼ってしまう人が少なくありません。ですが、これらを安易に利用すると、服用量が増加したり、やめられなくなったりする下剤依存症に陥るリスクがあります。さらに、その成分によっては、長期にわたって服用すると、大腸の粘膜が褐色から黒色に変色する大腸メラノーシス(大腸黒皮症)が出現することがあります。
近年、私のクリニックの便秘外来を受診される患者さんに大腸内視鏡検査を行うと、この大腸メラノーシスが見つかるケースが増えており、懸念を抱いています。そこで今回は、下剤依存症と大腸メラノーシスについてお話ししたいと思います。

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