健康で長生きするためには、腸内環境を整えることが大事。では、具体的にどうすれば、腸を元気にして、健康“腸”寿を実現できるのでしょうか? この連載では、これまで約4万人の腸を診てきた腸のエキスパートであり、腸に関する数多くの著書を手掛ける消化器内科医の松生恒夫さんが、腸を元気にして長生きするための食事や生活の秘訣を、エビデンス(科学的根拠)に照らしながら紹介していきます。今回のテーマは「味噌汁」です。
真夏を過ぎても熱中症に要注意
お盆が明けても厳しい暑さが続いています。前回は、夏便秘や夏バテ予防に、日本の伝統的な発酵飲料である「甘酒」をお勧めしました。今回は、甘酒と同様に、夏便秘や夏バテ、さらには熱中症予防にお勧めしたい食品をご紹介したいと思います。それは、日本の伝統的な発酵食品である味噌を使った「味噌汁」です。
熱中症は、高温の環境下で、体温の調節機能や体の電解質(ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなど)のバランスが崩れることで、体温の上昇や脱水が起こり、めまいや頭痛、吐き気や嘔吐などの症状を引き起こします。体が暑さに慣れていない5月ごろからリスクが高まりますが、近年は、真夏を過ぎた9月にも熱中症で救急搬送される人が少なくありません。消防庁の発表によれば、昨年(2019年)9月は、全国で9532人が熱中症で救急搬送されました。前年の2018年9月の2811人と比べ、実に3倍以上に増えています。8月下旬を迎えた今も、引き続き注意が必要です。
熱中症予防には、気温が高い時間の外出は控える、屋内では適切に冷房を使うなど環境に配慮するほか、汗などで失われやすい水分や電解質を補給することが大切です。味噌には電解質の中でも重要なナトリウムイオンが豊富に含まれており、味噌汁として飲めば、水分摂取も同時にできます。さらに、発酵食品である味噌は、腸内環境を改善し、夏便秘や夏バテを予防する効果も期待できるのです。

味噌汁を飲まない人が増えている
味噌は平安時代の文献にも登場するほど歴史の長い調味料で、鎌倉時代には武士が味噌汁を飲むようになったといわれています。その後、保存食として広まった味噌は、かつては多くの家庭で手作りされていました。近年では市販の味噌を使う家庭が大半となり、味噌汁を飲む頻度も減っているようです。
20歳以上の男女約1万人を対象に行われたある調査では、味噌汁を飲む頻度が「ほぼ毎日」と答えた人が24.3%、「週に2~3日くらい」が23.4%、「週に4~6日くらい」が20.2%でした。一方、「まったく飲まない」の4.8%を含め、週に1日以下の合計は32%と、最も多くなっています。

以前、私のクリニックの便秘外来でも、同様の調査をしたことがあります。通院中の20~60歳までの女性患者さん40人に、味噌汁を飲む頻度について尋ねたところ、「毎日飲む」と答えたのは14人、「週に2~3回程度飲む」と答えたのが6人で、半数の20人が「味噌汁はまったく飲まない」と回答しました。
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