健康で長生きするためには、腸内環境を整えることが大事。では、具体的にどうすれば、腸を元気にして、健康“腸”寿を実現できるのでしょうか? この連載では、これまで約4万人の腸を診てきた腸のエキスパートであり、腸に関する数多くの著書を手掛ける消化器内科医の松生恒夫さんが、腸を元気にして長生きするための食事や生活の秘訣を、エビデンス(科学的根拠)に照らしながら紹介していきます。今回のテーマは「夏便秘」と「甘酒」です。
ジメジメと蒸し暑い梅雨が続いています。日本気象協会は、今年の夏の気温は平年並みか高くなり、体にこたえる厳しい暑さの日が多くなる見込みと発表しています。
私が小学生だった1960年代には、最高気温が30度を超える真夏日になると暑いと感じたものですが、近年は真夏日が何日も連続することは当たり前となり、35度を超える猛暑日も珍しくなくなりました。昨年(2019年)は10月になっても、千葉市やさいたま市などで真夏日が観測されています。
こうした過酷な暑さは、腸にもダメージを与えます。暑くなると自宅や職場、交通機関では冷房を使用するため、外気温との温度差が10度以上になることもあります。そうした極端な温度変化を1日に何度も繰り返していると、この連載の「冷えは腸の大敵! 男も女も気をつけたい『気温差10度の法則』」でもご紹介したように、自律神経のバランスが乱れて、腸の働きが悪くなる停滞腸や、便秘を引き起こしやすくなります。また、夏は大量の汗をかくので、水分摂取が追いつかないと脱水気味になり、便は硬くなります。こうしたことから、気温が急上昇すると、排便力は低下していきます。
今年は特に、新型コロナウイルスの影響で、テレワークや外出自粛の期間が長く続いたことから、生活のリズムが乱れたり、運動不足になったりして、既に便秘気味という人もいるのではないでしょうか。昔と比べて、腸のコンディションを乱しやすい条件がそろっている日本の夏を乗り切るためには、腸の健康維持に気を配ることが大切です。
江戸時代に夏バテ予防に飲まれた発酵飲料「甘酒」
夏の便秘や夏バテ予防に私がお勧めしたい食品の1つが甘酒です。甘酒は、奈良時代の「日本書紀」にも登場するほど、古くから伝わる日本の伝統的な発酵飲料です。
甘酒といえば、お正月の初詣やひな祭りなどに飲むイメージがありますが、実は江戸時代から夏の暑気払い、夏バテ対策として飲まれてきました。それもそのはず、甘酒には糖分、塩分、ビタミンB群、オリゴ糖、食物繊維などが豊富に含まれており、疲労回復や腸の健康維持などに効果が期待できるのです。その豊富な栄養価から、甘酒は「飲む点滴」と呼ばれることもあります。

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