健康で長生きするためには、腸内環境を整えることが大事。では、具体的にどうすれば、腸を元気にして、健康“腸”寿を実現できるのでしょうか? この連載では、これまで約4万人の腸を診てきた腸のエキスパートであり、腸に関する数多くの著書を手掛ける消化器内科医の松生恒夫さんが、腸を元気にして長生きするための食事や生活の秘訣を、エビデンス(科学的根拠)に照らしながら紹介していきます。今回のテーマは、前回に引き続き「食物繊維」です。
前回(食物繊維不足は「停滞腸」「ヨゴレ腸」を引き起こす!)は、腸のエネルギー源として欠かせない食物繊維の特徴や、食物繊維には「不溶性」「水溶性」の2種類があることを解説しました。日本人の食物繊維の摂取量は減少傾向にあり、特に穀物由来の食物繊維が不足しがちになっています。今回は、食物繊維の効果的なとり方について、具体的にご紹介していきたいと思います。
まず前提として、食物繊維は不溶性・水溶性のどちらか一方をとればいいというものではありません。それぞれをバランスよくとることが大切です。では、どのようなバランスでとればいいのでしょうか。私は、長年の診療経験や研究から、不溶性食物繊維と水溶性食物繊維を「2対1」の割合でとることを推奨しています。
不溶性と水溶性は「2対1」の割合が理想的な理由
私は約20年前に、水溶性食物繊維の一種であるポリデキストロースに関する実験を行い、日本食物繊維学会の学会誌でその効果を発表しました。実験では、下剤(酸化マグネシウム)を絶えず服用している慢性便秘症の患者さんたちに、ポリデキストロース7gを含む飲料水100mLを30日間摂取してもらい、摂取前後の下剤の服用状況や排便の状況などを調べました。
その結果、ポリデキストロースの摂取前は下剤の服用量が1日2.5gだったのに対し、摂取後は1日2gに減少(図1)。排便の回数や便の硬さにも改善が見られました。

私は、前回ご紹介した厚生労働省の統計などから、日本人の食物繊維の平均摂取量を1日14gと考え、この14gを不溶性食物繊維と仮定しました(水溶性食物繊維を含む食材は限られており、意識的にとらないと不足しがちなため)。ここに水溶性食物繊維(ポリデキストロース)を7g追加摂取することで排便状況が改善したことから、不溶性食物繊維と水溶性食物繊維は、おおよそ2対1の割合で摂取するのが理想的なバランスであると考えました。