健康で長生きするためには、腸内環境を整えることが大事。では、具体的にどうすれば、腸を元気にして、健康“腸”寿を実現できるのでしょうか? この連載では、これまで約4万人の腸を診てきた腸のエキスパートであり、腸に関する数多くの著書を手掛ける消化器内科医の松生恒夫さんが、腸を元気にして長生きするための食事や生活の秘訣を、エビデンス(科学的根拠)に照らしながら紹介していきます。今回のテーマは「大腸がんの治療と術後」です。
前回(大腸内視鏡検査を受ける前に知っておきたい3つのポイント)は、大腸がんをはじめとする大腸の病気の早期発見に欠かせない、大腸内視鏡検査を受ける意義や、検査を安心して受けるための施設選びのポイントなどをお伝えしました。
国立がん研究センターが発表している最新がん統計では、2017年に新たに診断されたがんのうち、大腸がんの罹患率は第1位となっています。ただ、実際に大腸がんが見つかったとしても、早期の発見であれば完治が可能です。
大腸がんは一般的に5~6年かけて大きくなるので、大腸内視鏡検査をはじめとする精密検査で早期に発見して治療につなげ、治療後も定期的に大腸内視鏡検査を受けておけば、大腸がんで命を落とすリスクはほとんどないと言っても過言ではないでしょう。
今回は、大腸がんと診断された場合に、冷静に受け止め治療を考えるための予備知識としての治療の概要、さらに、大腸がんを治療した後の患者さんの様子についてお話ししたいと思います。

大腸がんのステージは「深さ」や「広がり」によって決まる
大腸がんの治療法は、がんの進行の度合いによって選択されます。このがんの進行の度合いを「病期」といいます。病期にはいくつかの分類法がありますが、読者の皆さんが一般的に耳にするのは、0期からIV期までに分けられるステージ分類が多いかもしれません。
大腸がんのステージは、がんが大腸の壁の中にどの程度深く達しているか(深達度)、周囲の組織にどの程度広がっているか(浸潤)、リンパ節や離れた臓器(肝臓や肺など)に転移しているかどうか(遠隔転移)などによって、0期からIV期までに分けられます。
深達度は「早期がん」か「進行がん」かの指標にもなるもので、がんが粘膜あるいは粘膜下層までにとどまるものを早期がん、粘膜下層を越えるものを進行がんと呼んでいます。