健康で長生きするためには、腸内環境を整えることが大事。では、具体的にどうすれば、腸を元気にして、健康“腸”寿を実現できるのでしょうか? この連載では、これまで約4万人の腸を診てきた腸のエキスパートであり、腸に関する数多くの著書を手掛ける消化器内科医の松生恒夫さんが、腸を元気にして長生きするための食事や生活の秘訣を、エビデンス(科学的根拠)に照らしながら紹介していきます。今回のテーマは「ココア」です。
今回は、読者の皆さんにもなじみの深いココアをテーマにお話しします。一般に、ココアは「体を温めてくれる飲み物」というイメージがあるかと思います。実際、ココアには保温力があり、腸を温めて便通を良くする効果が確認されています。また、ちょっとした工夫で、食べ過ぎ・飲み過ぎの後に、胃腸や気分をスッキリさせるリセットドリンクとしても活用できます。

ココアは濃いめの方が保温効果が高い
ココアはチョコレートと同じく、カカオ豆を原料としています。カカオ豆には抗酸化作用の強いカカオポリフェノールが含まれていて、血流を促進したり、血糖値の上昇を抑えたりする働きがあります。また、高い保水性があり腸の蠕動(ぜんどう)運動を促す不溶性食物繊維も豊富です。
一般的には、砂糖や乳製品などを加えた調整ココアを、お湯や牛乳に溶いて飲むことが多いと思いますが、脂肪分を取り除いただけの、甘くない純ココア(100%ココア)を利用した方が健康効果は高いと考えられます。ココアの保温効果も、濃度が高い方が高まります。
以前私が行った、白湯とココアの保温力を比較した実験では、90度のお湯100mLを入れたビーカーに、純ココアパウダーを4g、8g、12g加えてかき混ぜたものと、何も加えないお湯(白湯)、計4種類について、温度の下がり方を比較しました。
それぞれが70度になったところから測定していくと、30分後には白湯が33.0度だったのに対して、純ココアパウダーを4g入れたお湯は31.5度と、白湯より低い温度になっていました。ところが、ココア8gのお湯は35.1度、12gのお湯は38.7度と、白湯よりも高い温度を維持していたのです(図1)。

ココアに保温力が認められた理由は、ココアの濃度が濃くなるほどココア飲料の粘度が増し、さらにココア油脂による油膜が温度の低下を防いでくれるからだと考えられます。つまり、ココアを飲むときには少し濃いめにした方が、体や腸を温める保温力が高くなり、ポリフェノールや食物繊維もより多くとれると考えられます。