健康で長生きするためには、腸内環境を整えることが大事。では、具体的にどうすれば、腸を元気にして、健康“腸”寿を実現できるのでしょうか? この連載では、これまで約4万人の腸を診てきた腸のエキスパートであり、腸に関する数多くの著書を手掛ける消化器内科医の松生恒夫さんが、腸を元気にして長生きするための食事や生活の秘訣を、エビデンス(科学的根拠)に照らしながら紹介していきます。
前回(「4万人の腸を診てきた医師が語る 腸と寿命の深~い関係」)は、日本人の「腸内環境」が悪化していて、その影響と思われる小腸や大腸の病気が増えていることをお話ししました。今回は、腸内環境の3つの構成要素、すなわち「食事」「腸内フローラ(腸内細菌叢)」「腸管機能(腸の働き)」の中の1つである、「腸管機能(腸の働き)」についてお話ししたいと思います。
まず最初に、腸の構造を理解しておきましょう。腸は、口、食道、胃と続く消化管の最後部に位置しています。大別すると小腸と大腸に分かれていて、小腸は胃から近い順に十二指腸、空腸、回腸に区分されます。その先が大腸で、大腸は盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸、直腸に区分され、肛門へと続きます(図1)。小腸と大腸を合わせた腸全体の長さは7~9mにもなります。
腸には3つの基本的な働きがあります。それは、消化、吸収、排泄です。
口に入れた食物は、食道を通って胃に入ると、胃液によって消化されて粥状になり、十二指腸へと送られます。そこで、肝臓で生成された胆汁や膵臓から分泌された膵液などの消化液によってさらに消化・分解され、主に回腸で栄養分が吸収されると、その残りカス(食物残渣)が大腸に入ります。半液状だった残りカスは、大腸を通過する間に水分が吸収されて固形の便になり、便がたまってくると便意をもよおし、肛門から排泄されます。
小腸には免疫で重要な役割を果たすリンパ球が集中している
この腸の基本的な3つの働きについては、ご存じの方も多いでしょう。実は腸にはもう1つ、重要な働きがあります。それは、近年注目されている「免疫」の機能です。
この記事の概要
