健康で長生きするためには、腸内環境を整えることが大事。では、具体的にどうすれば、腸を元気にして、健康“腸”寿を実現できるのでしょうか? この連載では、これまで約4万人の腸を診てきた腸のエキスパートであり、腸に関する数多くの著書を手掛ける消化器内科医の松生恒夫さんが、腸を元気にして長生きするための食事や生活の秘訣を、エビデンス(科学的根拠)に照らしながら紹介していきます。今回のテーマは「低カロリーで食物繊維の多い食材を見分ける方法」です。
食物繊維不足を助長する糖質制限に要注意
新型コロナウイルスの感染拡大がやまず、今年の年末年始は会食や旅行を控えて家で過ごした方も多いのではないでしょうか。
外出を控える生活が長引くと、運動不足や過食気味になり、いわゆる「コロナ太り」を気にする方も増えているようです。新年を機にダイエットを始めた方、これから始めようと思われている方もいらっしゃるかもしれません。その際に気をつけていただきたいのが、過度な糖質制限です。
摂取カロリーを抑えるために、主食のごはんやパンなどの穀類を控えると、穀類に含まれる食物繊維の摂取量も減ってしまい、便秘などの腸の不調につながります。
以前、とある健康関連のテレビ番組に出演した時、女優やモデルの方の食生活を伺って驚いたことがあります。常にダイエットを意識していて、主食の炭水化物や糖質の多い果物などを制限している人が多く、慢性的な便秘に悩んでいる人も少なくなかったのです。
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」(2020年版)で目標とされている食物繊維の1日の摂取量は、18~64歳の男性で21g以上、女性で18g以上です。一方、「国民健康・栄養調査」(2018年版)では、20歳以上の食物繊維の平均摂取量は男性で15.3g、女性で14.7gと、いずれも目標を下回っています。
さらに、先ほどのテレビ番組の出演者たちの場合は、1日の食物繊維の摂取量は5~7g程度と考えられ、目標値の3分の1程度、平均値の2分の1以下しかとれていませんでした。
食物繊維はしっかりとりたいけれど、カロリーはなるべく抑えたい。そんな人たちに向けて、私が独自に考案したのが「ファイバー・インデックス値」(以下F・I値)です。

「F・I値」から低カロリーで食物繊維が多い食材を選ぶ
F・I値は、食材の100g当たりのエネルギー(熱量)と食物繊維量の比率を示す指標です。F・I値が低いほど、食物繊維が多くて、カロリーが低いことを示します。主な食品のF・I値を示した表1(次ページ)を見ていただくと、同じ食品群でもF・I値が低いもの、高いものがあることが分かります。
例えば、日本人の代表的な主食であるごはん(精白米)100gのエネルギーは168kcalで、食物繊維量は0.3g。この場合のF・I値は、168kcal÷0.3gで560になります。玄米ごはんの場合、エネルギーは165kcalで、白米ごはんと3kcalしか変わりませんが、食物繊維量は1.4gあるので、F・I値は118と低くなります。さらに、以前にご紹介したもち麦と白米を2対1の割合で炊く「2:1もち麦ごはん」(作り方はこちら)のF・I値は75とさらに低くなり、低カロリーで食物繊維が多いことが分かります。