健康で長生きするためには、腸内環境を整えることが大事。では、具体的にどうすれば、腸を元気にして、健康“腸”寿を実現できるのでしょうか? この連載では、これまで約4万人の腸を診てきた腸のエキスパートであり、腸に関する数多くの著書を手掛ける消化器内科医の松生恒夫さんが、腸を元気にして長生きするための食事や生活の秘訣を、エビデンス(科学的根拠)に照らしながら紹介していきます。今回のテーマは「大腸リセットプログラム」です。
年末から年始にかけて、会食や飲み会が続き、腸の調子がいまひとつ、お腹が重苦しくて便秘がち……などと感じている人もいるのではないでしょうか。そこで今回は、新しい年を「快腸」の状態で気持ち良く始めるために、私のクリニックの便秘外来の患者さんに勧めている「大腸リセットプログラム」をご紹介します。
大腸リセットプログラムは、働きの悪くなってしまった腸をいったん空っぽにしてそれまでの状態をリセットし、腸に良い作用を与える食材を集中的にとることで、「快腸」な状態に導くものです。
大腸内視鏡検査のプロセスからヒントを得て考案
私は腸の専門医として、これまでに4万件を超える大腸内視鏡検査を行ってきました。私のクリニックで大腸内視鏡検査を行うときは、まず腸管洗浄剤(下剤)を服用していただき、便を排出。さらに、残った便を取り除くために、肛門から器具を挿入し、ぬるま湯で大腸内を洗浄します。
このような処置のあとに大腸内視鏡検査を行うのですが、検査後は便秘症の患者さんから、「排便がスムーズになった」「便秘が改善した」といった声がたびたび聞かれました。
そこで私は、腸を空っぽにしてそれまでの状態をリセットすると、腸の働きが改善されるのではないかと考えました。さらに、腸がリセットされた状態のときに、腸内環境を整えたり、腸の働きを促したりする食材を積極的にとることで、より改善効果を高めることができるかもしれないと考え、7日間で行う大腸リセットプログラムを考案したのです。
試しに、このプログラムを便秘外来の患者さんに任意で試していただいたところ、「お腹の張りが解消した」「下剤を飲まずに排便できるようになった」など、好評を得ることができました。このような効果は、比較的軽度の便秘症の患者さんの方が実感しやすいことも分かりました。
初日は便を出し切り、ドリンクのみの軽い断食を
それでは、大腸リセットプログラムの進め方をご紹介していきましょう。まず、留意点と7日間の流れを簡単にまとめます。
大腸リセットプログラム
【留意点】
- このプログラムは、お腹の張りや残便感といった腸の不調(停滞腸)を感じている人や、軽度の便秘症の人向けです。
- 1日目に1度だけ、酸化マグネシウムを主成分とする塩類下剤を服用し、軽いファスティング(断食)を実施。その後もある程度の食事制限があるため、週末や連休を利用するなど、時間や気持ちに余裕のあるときに行ってください。
- 何らかの疾患で治療を受けている人は、まず主治医に相談を。
【プログラムの流れ】
プロセス | 摂取するもの | |
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1日目 | 1. 腸の掃除 |
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2. 腸内環境の改善 |
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3. ファスティング |
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2~7 日目 |
腸内リセット |
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1日目
1日目は、以下の3つの手順を踏みます。腸の働きが悪くなっていると、食べ物の消化や吸収が負担となって、便の排泄にも時間がかかりやすくなります。そこで、いったん全ての便を出し切り、摂取する食べ物の量を最低限にすることで、腸に休息を与えます。
1. 腸の掃除
空腹時に下剤を服用して、たまっている便を出し切ります。下剤は副作用の心配や体への負担が少ない非刺激性の塩類下剤(酸化マグネシウムを主成分とするもの)を使用してください。市販のものでは、スラーリア便秘薬(ロート製薬)やミルマグ液(エムジーファーマ)などがあります。下剤の服用後は1~2リットルの水分をとります。通常は1~2時間程度で便意が起こり、排便が促されます。