がん患者は就活で自らの病状を伝えるべきかどうか?
精巣腫瘍患者友の会代表 改發厚さん(下)
福島恵美=ライター
セカンドオピニオンや就活で悩む患者が多い
相談に来られる方は、どのような悩みが多いのですか。

一つは、「セカンドオピニオンを受けたい」という相談です。J-TAGのホームページでは「精巣腫瘍を学ぶ」という項目を作っています。三木先生と中村先生が、精巣腫瘍はどのようながんで、どんな治療を行うかなどを、標準治療(*2)に基づいて解説する様子を動画で伝えています。最近はこの動画を患者さんが見て、自分の状況を把握されることが多いのですが、中には「自分は違う治療を勧められている」と相談に来られることがあるのです。
また、主治医の言動で精神的に傷付き、信頼感をなくしたことからセカンドオピニオンを求める人もいます。患者さんの状態によっていろいろなケースがあるので、中村先生に事前に相談することもあります。
仕事に関しては、「就職活動のときに、がんであることを告げるべきですか」という相談が結構あります。虚偽のことを採用者に話すのはいけないけれど、がんであることを自ら言う必要はないと僕は思うんです。会社を頻繁に休まないといけないような場合は、伝えた方がいいでしょうけれど……。ある男性が、「自分はがんです」と言い続けて就職活動していたのですが、ことごとく不採用でした。あるとき、がんのこと言わずに採用試験を受けたら、通ったそうです。仕事をする上で問題がないのなら、それでいいと思います。
精巣腫瘍に特化したセンターを作りたい
がんになっても働きやすい社会にするためには、何が必要だと思われますか。
企業などで人を雇うときに、がん経験者の採用枠をつくるとか、がんになった人が働ける機会を増やしてほしいと思います。今はがんでも治る人が増えてきていますし、これからは定年の年齢が上がっていくでしょうから、働く場所はますます必要になってきます。がんからサバイブした人は大変な治療を乗り越え、生きていることに感謝したり、社会貢献の大切さに気付いたりしているから、モチベーションが高い人が多いと僕は感じるんです。できればJ-TAGを株式会社にして、がんになった人を派遣するような就労支援ができたらいいなと思っています。
就労支援の他に、J-TAGとして今後、取り組みたいことはありますか。
精巣腫瘍の患者さんが治療でき、家族も一緒に泊まれる部屋があって、常時ピアサポートができる施設を作りたい、と半ば妄想ですが考えています。というのも、精巣腫瘍の患者さんは若いから、子どもが小さい人が多いのです。手術と抗がん剤治療をすると半年程、入院することになりますから、家族と離れ離れになってしまう。住んでいる場所が病院から離れていると、家族は周辺の宿泊施設を利用することになり、費用がかさみます。神戸には小児がんの子どもたちが家族と一緒に過ごせる施設、チャイルド・ケモ・ハウスがありますが、それに近いイメージですね。
あとは将来的に、今、3カ所で行っている「精巣腫瘍ピアサポート」を全国7カ所ぐらいにまで広げていきたい。J-TAGの会員(会員用メーリングリストの利用やメルマガの購読などができる)は北海道から沖縄まで現在約330人います。東北、中部、九州などエリアごとで、ピアサポートができればと思っています。
(カメラマン 水野浩志)
精巣腫瘍患者友の会(J-TAG)代表

