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がんになっても働きたい

がんになった医師、生き甲斐を考えて選んだ治療とは

放射線腫瘍医 唐澤久美子さん(下)

 福島恵美=ライター

 一方、患者さんは自分の人生で大切にしたいことを、ちゃんと医師に言わないといけません。対話をしてお互いの話をすり合わせ、最終的には患者さんが治療を選ぶことになります。

患者の気持ちと医師の意見を交換し合う

体調のことだけでなく、自分が何を優先して生きていきたいのかを、主治医にきちんと伝えることが大事なのですね。

「患者さんは、人生で何を大切にしたいかを主治医に伝えることが重要です」

 そうですね。患者さんの気持ちと医師の意見を、お互いに交換し合うことが大切だと思います。例えば、やりたいことがあって、これ以上つらい治療はしたくないという、90歳のがん患者さんがいたとします。私ならその気持ちを尊重し、強い抗がん剤治療はしません。けれど、診療ガイドライン(*3)は年齢別に書かれていませんから、この方の標準治療は抗がん剤治療をすることになっていたりするわけです。

 ただ、中には「お芝居を見に行きたいから、抗がん剤治療はやめてちょうだい」なんていう人もいます。このような場合は、「優先順位が正しくないと思いますよ」とその患者さんにとって必要なことを伝えます。患者さんの望みを何でも聞く人が、いい医師ではありません。

患者の話を聞かない医師なら代えればいい

病院では診察時間が限られ、待合室にたくさんの患者が待っています。医師が話したいことだけを言い、患者は思うように自分の話を切り出せないこともあるような気がします。

 患者さんの話を聞いてくれないような医師は、代えればいいと私は思います。「先生は私の話を聞く時間がないのですか。それなら私は先生の治療を受けません。他の病院に行くから紹介状を書いてください」と言ったっていいんです。

 日本では、どの病院のどんな医師に診てもらうかを自分で選べますよね。国によっては、診てもらう医師が地域で決まっていて、自由に選択できないところもあります。治療に要する時間を考えると、長い時間をかけて医師を探すのは、難しいかもしれませんが……。でも、自分の人生ですから自分で決めないとね。

 もしくは話を聞かない医師に、ちゃんと話してみる。「先生にとって私は100人に1人の患者かもしれないけど、私の人生がかかっているんです。私の話を聞いてください」というふうに。

 私の場合は誰が何と言おうと、がんの専門医、大学教員として生きる私の生きがいを全うできるように、自分が何を優先したいかを医師にしっかり伝えています。そのようにして、自分の治療は自分で決めることにしています。

「自分の治療は自分で決める」ですね。そう聞くと、それは高度な専門知識を持っている唐澤先生のような人だからこそできることと思う人も多いかもしれません。でも、おっしゃりたいのは、医師の言葉をただうのみにするのではなく、少なくとも自分がどう生きたいかを主張することが大切ということ。そして、そのためには前回記事「予定通りがんになった医師 『仕事は辞めなくていい』」でおっしゃっていたように、学会が出している書籍や国立がん研究センターのホームページで調べるなどして、自分の病気について正しい知識を身に付けることが不可欠、ということですね。大変参考になりました。ありがとうございました。

*3 診療や治療に関する、標準的な推奨事項とその根拠をまとめたもの。ある状態の一般的な患者を想定し、診療上の意思決定を適切に行えるように支援することを目的としている

(カメラマン 村田わかな)

唐澤久美子(からさわ くみこ)さん
東京女子医科大学 医学部長・放射線腫瘍学講座教授
唐澤久美子(からさわ くみこ)さん 1986年東京女子医科大学放射線科入局。同大学放射線医学講座講師、順天堂大学医学部放射線医学講座助教授などを経て、2011年放射線医学総合研究所重粒子医科学センター病院治療課第三治療室長。15年東京女子医科大学放射線腫瘍学講座教授・講座主任。18年4月から同大学理事・医学部長。専門分野はがん放射線療法(とくに乳がんなど)、粒子線治療。放射線治療専門医、がん治療認定医、日本乳癌学会乳腺専門医

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