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がんになっても働きたい

コロナ下、がん患者の不安 心のケアを専門医が伝授

がん研究会有明病院腫瘍精神科部長 清水研さん(上)

 福島恵美=ライター

 働く世代ががんになると、治療と仕事の両立や家族との向き合い方など、様々な不安を抱えることが多い。まして、新型コロナウイルス感染症の収束の見通しが立たない中、感染への不安も加わり、もんもんとした気持ちになりがちだ。

 自身もがんになったライター、福島恵美が、がんになっても希望を持って働き続けるためのヒントを探るシリーズ。精神腫瘍医としてがん患者やその家族と対話しているがん研有明病院の清水研さんに、がん患者が抱える不安の状況やその向き合い方を聞いた。

がん患者は様々な不安を抱えているが、コロナの感染が広がる中ではなおさらだ(写真はイメージ)(c)citalliance-123RF

がん患者や家族の心をケアする精神腫瘍医

清水さんは精神腫瘍医として、これまでに4000人以上のがん患者や家族らの相談を受けられたと聞きます。精神腫瘍医とは聞きなれない言葉ですが、まずはその役割をお聞かせください。

 精神腫瘍医とは、がんを専門とした精神科医、あるいは心療内科医のことです。精神医学や心療内科における心の問題に関しての専門性を持つとともに、がんという病気のことや、がんになったときの患者さん、そのご家族の気持ちを熟知していることが特長だと思います。がんの患者さんが精神的につらくなった際に町のクリニックに行ったら、精神科の医師から「がんのことは分からないので…」と言われることが時折あると聞きます。私たちはがん患者さんが抱えている心理的・精神的な問題に、きちんと対応することができるのです。

 一番多い問題は、がんになって気持ちがひどく落ち込んで適応障害(*1)になることです。がんを告知されたり、がんの再発を告げられたりすると、5人に1人くらいは適応障害など精神医学的な診断に該当するような状態になることが、過去の調査で分かっています。そのような方や「眠れない」、「不安である」という方の相談に乗ったり、がんの進行や手術の影響で起こる幻覚の「せん妄」のようにお薬の投与が必要な症状にも対応したりしています。

ご家族を診察されることもあるのですね。

 私の外来に来られるのは、がん患者さんが8割、ご家族が2割です。ご家族も患者さんと同じ、あるいは患者さん以上に精神的な負担が大きいといいます。患者さんご本人を支えるために「自分が頑張らないといけない」と思いながらも、どうしていいのか分からずに相談に来られる方が多いです。

*1 強いストレスが原因で現実の生活に適応できなくなる状態、あるいは病気のこと。ストレスとなる出来事が明らかなのが特徴。

不安とは不確実な脅威に対する心の反応

不安については、具体的にどのような相談が多いですか。

 不安という感情は、不確実な脅威に対する心の反応ですので、「これから自分はどうなってしまうんだろう」ということが起きると不安になります。一番多いのは、「治療が終わってから、またがんが再発するのではないか」「治療効果がなくなってしまうのではないか」という病気に対する不安です。仕事をしておられる方は「これから働いていけるのだろうか」など、先行きに関する様々な不安を感じていらっしゃいます。がんの特徴として、治療後も病気が悪くなる可能性が残されているため、将来に対する不安が出てくるのだと思います。

 治療中の患者さんは、目の前の治療に一生懸命です。治療が終わって定期的な検査などで体の状態をチェックする段階になると、「がんがまた襲ってくるかもしれない」という不安が出てきます。時間とともに不安と向き合うことに皆さん慣れていきますが、初期治療が終わった直後は非常に不安になられます。

私も治療が終わり、落ち着いてから再発の不安が高まってきました。

 そうですよね。最近はAYA世代(*2)と言ったりもしますが、20~40代のがん患者さんにとって就労は大きな問題ですし、子育てや子どもを産めるかどうかのストレスもあるでしょう。60、70代でがんになるのとは違い、社会の中でこれから家庭を築いていく、子育てをするという中での不安はたくさんあると思うのです。

*2 Adolescent and Young Adult(思春期・若年成人)の頭文字を取ったもので主に、15歳から30代までの世代を指す

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