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がんになっても働きたい

コロナ下、がん患者の不安 心のケアを専門医が伝授

がん研究会有明病院腫瘍精神科部長 清水研さん(上)

 福島恵美=ライター

その働いている世代の人たちには、どのような心掛けで向き合っておられるのですか。

 基本的に私は、人にはそれぞれに困難と向き合っていく力があると思っていて、その力を出せるようにお手伝いする気持ちでいます。例えば、患者さんが課題を抱えながらどう働いていくかに悩んでいたら、ご本人が何を大切にしたいと思っているのか、何を諦めないといけないのかなどを聞き、一緒に問題を考えて整理していきます。

1回の診察には、どれくらいの時間をかけられるのでしょうか。

 人それぞれですが、最初の診察には60分はかけると思います。2回目以降は15分です。よりしっかりとしたカウンセリングが必要な場合は、「レジリエンス外来」という1時間程度のカウンセリングを5回ほど提供する取り組みも行っています。

不安は人間に必要な感情

そもそも人は、なぜ不安になってしまうのでしょう?

オンラインで取材に応じる清水先生。「不安」は人間にとって必要な感情だという

 感情にはいろいろな役割があり、不安は人間に危険を教えてくれます。例えば暗闇の中、知らないところを歩いていたら、「何か怖いものがあるかもしれない」という不安の感情が出てくることで危険を察知できます。危険を知らせるアラームのようなものですから、心構えをさせてくれるわけです。ですから、「不安を消そう」と考える必要はなく、「不安は人間に必要な感情だ」と思われたほうがいいのです。

 ただ、問題になるのは、このアラームが鳴りっぱなしの方がいるということ。がんの再発のことばかり考えて他のことが何も手に付かなかったり、1日中ドキドキして落ち着かなかったり。そうなると、生活に支障が出てしまいますから、心を調整していくことが必要になります。

コロナ禍で間違った情報に踊らされない

不安は必ずしも悪いものではないのですね。とはいえ、現在、新型コロナウイルス感染症の収束が見えず、もともと不安になりがちながん患者は、より不安が増しているような気がします。

 本当にそうだと思います。がんになることで先ほどに申し上げたような不安があり、コロナの落ち着く兆しが見えない中で、感染することへの不安や、自分たちは医療を受けられなくなるのではないかという不安もあると思います。特にがん患者さんが不安になったのは、乳がんだった女優さんがコロナでお亡くなりになられたことでした。その頃は、彼女が受けていた放射線治療の影響で重症化したように、臆測でマスコミに報道されたことがありました。しかしその後、日本放射線腫瘍学会が、乳がんの放射線治療は安全であることを示す情報を出しています。まず、間違った情報に踊らされないようにすることが大切です。

私自身はがんの治療は終わっていて、特にコロナに対しての不安はないのですが、日本癌学会のウェブサイトに掲載されている「一般の方へ 新型コロナウイルス感染症とがん診療について」を参考に、がん患者とウイルス感染の情報を収集しました。

 がんとコロナの情報に当たるなら、信頼できる公的、あるいは学術的な団体が発信しているものがよいと思います。情報には、調査などにより直接集めた一次情報や、それを解釈する二次情報があります。例えば東京都などが発表した「東京での新規感染者は2500人でした」というのは一次情報ですが、それを聞いた人が「東京はコロナだらけです」と言えば、これは二次情報です。このように短絡的な言い方をされると不安になりますから、二次情報には気を付けましょう。

◇     ◇     ◇

 後編では、不安を和らげる対処法を具体的に聞いていく。

清水研(しみず けん)さん 精神科医・医学博士。公益財団法人がん研究会有明病院腫瘍精神科部長。日本総合病院精神医学会専門医・指導医。日本精神神経学会専門医・指導医。
清水研(しみず けん)さん 1971年生まれ。金沢大学卒業後、都立荏原病院での内科研修、国立精神・神経センター武蔵病院、都立豊島病院での一般精神科研修を経て、2003年に国立がんセンター東病院精神腫瘍科レジデント。以降、一貫してがん患者、その家族の診療を担当。2006年から国立がんセンター(現・国立がん研究センター)中央病院精神腫瘍科に勤務。2020年から現職。主な著書に『もしも一年後、この世にいないとしたら。』(文響社)、『がんで不安なあなたに読んでほしい。』(ビジネス社)などがある。

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