日経グッデイ

ストレス解消のルール

肌が乾燥してかゆい時、やってはダメな4つの「し過ぎ」

「かき過ぎ」「洗い過ぎ」「こすり過ぎ」「(保湿の)しなさ過ぎ」はNG

 結城未来=健康ジャーナリスト

写真はイメージ=(c) Kaspars Grinvalds-123RF

 まずは、こちらを見ていただこう。

皮膚にかゆみを感じたら、かきまくる

入浴時に体をゴシゴシとこすってしっかりと洗いたい

手も体も洗浄力の強い洗浄剤でサッパリと洗うのが好きだ

入浴後、手洗い後はしっかりと水気を拭きとって乾かすことが大切だ

手があれた時に塗るクリームはベタつかないように薄く塗るようにしている


 いったん「かゆみループ」にはまってしまうと、日中の集中力や夜の睡眠にも大きな影を落とす。負の連鎖を断ち切り、「かゆみストレス」から解放されるには、毎日の行動を見直すことが大事なようだ。自身も「乾きとかゆみ」に悩む健康ジャーナリストの結城未来が、東京逓信病院客員部長でもある、あたご皮フ科の江藤隆史副院長に「かゆみストレス」から抜け出す策を教わった。

 これは、乾燥による「かゆみストレスNGルール」だ。一つでも思い当たるものがあれば、すぐにでも改めることが、寒い季節の肌の乾燥とかゆみを止める近道だ。

 たかが「かゆみ」と思うことなかれ。ともするとかゆみは、かくことで次のかゆみを呼び込み、炎症を起こしてさらに強いかゆみへと増大する「負のスパイラル」を招く。

◇     ◇     ◇

 先日、大切な会議に出席した時のこと。皆が考え込む沈黙の時間に、急に響きわたるポリポリ音。1人が首をかき出したのだ。それはすぐに終わったが、続くようにそのお隣さんも指を動かして肌をかき始めた。気づいた私も、体がムズムズしてきた。どうやら、かゆみは伝染するようだ。

――江藤副院長「肌をかくしぐさが伝染する話はよく話題に上ります。他の季節に比べて特に冬はかゆみを感じやすい時期ですから、なおさら他人のしぐさを見てかきたい気持ちになるのでしょうね」

皮膚のバリア機能が壊れると、刺激に敏感に

 特に寒くなる季節に体の「かゆみ」を感じがちなのはなぜだろうか?

――江藤副院長「気温が低下すると、体温を逃がさないように血管が収縮。皮膚表面の血流が低下するので、皮脂や汗の分泌も低下して皮膚は乾燥してしまいます。乾燥が進むと、皮膚のバリア機能が壊れて刺激に敏感になり、かゆみを感じやすくなるのです」

 「皮膚バリア」とはどういうものだろうか?

――江藤副院長「大きく言うと、皮膚の表面を覆う表皮と皮脂膜が皮膚バリアにあたります。なかでも角層の下にある顆粒(かりゅう)層と皮膚表面の皮脂膜がバリアとして重要な役割を担っていて、これが細菌やアレルゲンなどの外からの刺激をブロック。中から水分が蒸発するのを防ぐフタとして肌の潤いを保ってくれる役割があります」

江藤副院長への取材を基に編集部で作成(イラスト 平井さくら)
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 つまり、こういうことらしい。皮膚は、角層、顆粒層などからなる「表皮」と、「真皮」「皮下組織」の三層構造になっている。表皮の上の皮膚表面にある皮脂膜は、外部からの異物の侵入を妨げるワックスの役割を担う。さらに、表皮の中の顆粒層の細胞の一部が極めて重要なバリア構造といわれ、そのわずか0.02mm、食品用ラップ2枚ほどの薄さの顆粒層の一部が、皮脂膜とともに肌の健康を守る「皮膚バリア」として重要な役割を担っているのだ。

――江藤副院長「そうですね。車で例えれば、皮脂膜は油の膜ですから『ワックス』。顆粒層は金網のようなしっかりしたバリアですので、鉄板をサビから守る『塗装』にあたります。この塗装が極めて大切なのです。なかでも、顆粒層に多く含まれる『フィラグリン』と呼ばれる成分が重要で、異常があるとアトピーを引き起こしやすくなります。この大切な顆粒層のバリアを守っているのが皮脂膜ともいえます。スキンケアは、皮脂膜を補って顆粒層のバリアを守るという意味で、とても大切なのです」

 かゆみとの関係はどうだろうか?

――江藤副院長「皮膚バリアが弱いと、外部からさまざまな異物が侵入してかゆみを引き起こします。いわば、『かゆみ』は『バリアが壊れて異物が侵入していますから注意して!』という体からの信号なのでしょうね」

 かゆみを感じて肌をかき始めると、たいてい同じところをかき続けてしまう。かくいう私も手加減なしにかき過ぎた腕が真っ赤にはれあがり、周囲に驚かれることが少なくない。

――江藤副院長「爪でかきむしって顆粒層を含む皮膚バリアを壊してしまうと、本来は表皮と真皮の境界部までしか伸びていないかゆみを感じる神経が『細胞が壊されたぞ!』というシグナルを受けて、表皮内の角層のそばまで伸びてくるので知覚が過敏になり、かゆみが強くなるのです。壊れたバリアから細菌やアレルゲンが侵入することでもかゆみの神経は刺激されます。異物を払いのけようと無意識にかきむしることで、ますますバリアを壊して炎症やかゆみを悪化させてしまうのです」

 どうやら「かゆみ」には、かくことで更なるかゆみを呼び込む負のサイクルリスクがあるようだ。「乾燥」から始まる「かゆみ」を侮ってはいけない。

暖房機器や入浴方法に気をつけて

――江藤副院長「エアコン、ホットカーペット、ストーブ、コタツを使用することによる肌の乾燥にも注意が必要です。乾燥を感じたら、加湿器を活用することも考えた方がよいでしょうね」

 どれも冬の必須アイテムだ。寒くなると、熱い湯も恋しくなる。

――江藤副院長「入浴時も注意が必要ですよ。結城さんはどういう入浴法ですか?」

 私の場合、夏にはシャワーで済ませることも少なくないが、冬は熱めの湯をためて入浴する。汚れをしっかりと落とすためにナイロンタオルで体中をこすり上げてサッパリするのも好きだ。特に膝やかかとがカサつきがちなので、しっかりとこすって汚れを落とすように心がけている。

――江藤副院長「それはダメですね。ゴシゴシ洗いは日本人の美徳のように思われていて、洗い過ぎの人が少なくありません。洗濯でも皿洗いでも油汚れがよく落ちるのは熱いお湯ですよね!? 同じように、お湯では皮膚の大事な脂も溶けてしまいます。皮脂膜が溶けた皮膚はワックスのはげた車のように、ダメージを受けやすい状態。繊細になっている皮膚を強くこするように洗ったり洗浄力の強い洗浄剤を使ったりすると角層が削られ、顆粒層にある皮膚バリアも簡単に壊されて乾燥が進み、かゆみがひどくなります」

 私の場合、特に膝の乾燥が気になってはいたが、まさか入浴の仕方がカサカサ肌の大きな原因になっていたとは驚きだ。

 では、どうすればいいのだろうか?

写真はイメージ=(c) liza5450-123RF

――江藤副院長「薄い皮膚バリアを壊さないように洗浄剤を泡立てて、泡だけを肌の上にのせ、なでるように優しく洗ってください。泡の力だけで十分に汚れは落ちます。せっけんの成分を残さないように、しっかりとすすぐことも忘れずに。それから、入浴後も注意が必要です」

 タオルでしっかりと水気を拭きとるだけではいけないのだろうか?

――江藤副院長「ゴシゴシと肌をこすると、皮膚バリアを壊すことになります。肌を押さえるように水滴をとってください。さらにその後も大切ですよ」

 水気を拭きとったら、火照った体を鎮めてゆっくりとしたいという人も少なくないだろう。

――江藤副院長「乾燥やかゆみが気になるなら、急いで保湿ケアをすることが大切です。入浴中に肌を洗うことで、皮膚の表面をワックスのように覆っている皮脂膜はかなり落ちてしまいます。皮脂膜が再び分泌されるまでには時間がかかるため、入浴後そのままにしておくと皮膚から水分が急速に失われてしまうのです。特に冬場はお部屋が乾燥しているので要注意。余分な水分を軽く吸いとったら、すぐにクリームなどの保湿剤で乾燥を防いでください」

入浴後、10分以内にたっぷりの保湿剤を

写真はイメージ=(c) Torwai Suebsri -123RF

 「すぐ」というのは、どれくらいの時間だろうか?

――江藤副院長「それほど猶予はありませんよ。入浴後約20分で皮膚の水分は蒸発して入浴前よりも乾燥してしまいます。10分以内には保湿剤を塗って皮膚にフタをして乾燥を防いでください」

 乾燥とかゆみを防ぐには、入浴直後も気が抜けないようだ。手を洗う際はどうだろう? 特に冬になると私の手はかさついて、時にはかゆみを生じることもある。

――江藤副院長「1日何回も水に触る『手』こそ、あれやすいですね。手のひらには毛がないので皮脂もありません。その分、丈夫にできてはいますが保護する膜がありませんから、いったんあれるとドンドン悪化してしまいます。水に触れた直後は保湿剤でケアしていただきたいですね。結城さんのように手あれが気になるなら、なおさらです」

 ハンドクリームを塗るようにはしているが、それでも冬には乾燥しがちだ。さらっとした乳液タイプでは物足りないのだろうか?

――江藤副院長「刺激が少ない保湿剤なら、サラッとした乳液タイプでも、少々濃厚な軟こうでも、どちらでも大丈夫です。とにかく、自分が続けられること、こまめに塗れることが大切なのです。それでも乾燥するようでしたら、塗り方と量に問題があるのかもしれません」

 そういえば、「塗り方」と「量」を気にしたことはなかった。ベタつかない程度に薄く手全体をくるむように塗る程度だ。

――江藤副院長「量が少な過ぎるのかもしれません。乾燥して角層が乱れた皮膚に薄くしか塗らないと、患部を十分にカバーできないことがあります。保湿剤も薬でも塗る量は、成人の手のひら2つ分の面積に対し『フィンガー・ティップ・ユニット』。つまり、人さし指の第一関節にのるくらいの量を目安にたっぷりとシワに沿って塗ることが大切です。グラム数でいえば約0.3~0.5g相当。塗った後にティッシュをくっつけて手をひっくり返してもはがれ落ちない程度だと思ってください。量が足りないと、塗る意味がありませんよ」

江藤副院長への取材を基に編集部で作成(イラスト 平井さくら)
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 普段、当たり前のように行っていることに、乾燥とかゆみの負のスパイラルの入り口が潜んでいる。「かき過ぎ」「洗い過ぎ」「こすり過ぎ」「(保湿の)しなさ過ぎ」の4つの「し過ぎ」は、この時期のNG行為だ。精神面にも関わる「かゆみストレス」から解放されるためにも、きょうから生活習慣を改めたいところだ。

江藤隆史(えとう たかふみ)さん
あたご皮フ科副院長、東京逓信病院客員部長
江藤隆史(えとう たかふみ)さん 1977年東京大学工学部卒業、1984年東京大学医学部卒業。関東中央病院皮膚科、東京大学医学部皮膚科助手などを経て、1989年ハーバード大学へ留学(病理学教室研究員)。帰国後、東京大学医学部皮膚科医局長、講師、病棟医長を務め、1994年東京逓信病院皮膚科医長、1998年同院皮膚科部長。2014年より副院長を兼任。2019年より現職。特にアトピー性皮膚炎、乾癬(かんせん)、レーザー治療、水疱(すいほう)症などを専門とする。
結城未来(ゆうき みく)
エッセイスト・フリーアナウンサー
結城未来(ゆうき みく) テレビ番組の司会やレポーターとして活躍。一方でインテリアコーディネーター、照明コンサルタント、色彩コーディネーターなどの資格を生かし、灯りナビゲーター、健康ジャーナリストとして講演会や執筆活動を実施している。
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