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ストレス解消のルール

周囲の目が気になる「せき」 止めるのNG、姿勢を変えると軽減も

せきストレス解消のルール

 結城未来=健康ジャーナリスト

 医療機関では『せきが続く期間』を『3週間』と『8週間』を基準に分類して、疾病の見極めをしているという。感染症には3週間で落ち着くものが多い。8週間以上長引くような『せき』には、肺がんや結核などの病気に加えて、レントゲンでは異常が見られない病気が隠れていることも少なくないようだ。

――迎教授「『せき』が3週間以上続くのなら、精密検査をして他に原因がないかを探る必要があります」

[画像のクリックで拡大表示]

――迎教授「実は、脳の『せき中枢』に『せきをするように』信号を送るセンサーは、気道だけでなく、胃、食道や心臓など他の臓器にも存在します。つまり、『せき』は体からの警告信号。私たち医師は、その『せき』という信号に耳を澄ませ、『せき』の元凶である疾患を見つけて根本から治療することを大切にしています」

 どうやら、病気を知らせるサイン「せき」を侮ってはいけないらしい。

「せき」は1回、2キロカロリー!

 それにしても、「せき」は辛い。実は私、風邪をこじらせてぜんそくに進行したことがあるが、一晩中せきが止まらず七転八倒の苦しみで朝を迎えた苦い経験がある。特にこのコロナ禍では「せき」の苦しみに加えて周囲の白い目があり、辛さ倍増だ。

――迎教授「そうですね。『せき』1回で2キロカロリーを消費すると言われていますから、1日中せきを続ければ、体にかなりの負担がかかります。『せき』で肋骨を折るケースもあるくらいです」

 この苦しみを手軽に軽減できる方法はないのだろうか。

――迎教授「寒い時期には喉が乾燥して『せき』が出やすくなります。特に加齢で唾液の出が悪いために口が乾燥して『せき』が出るというケースも少なくありません。『喉を温める』『アメをなめる』ことは喉を潤して症状を和らげるのに良い方法です。コロナ禍でのマスク着用は『喉を温める』という点でも良いことですし、首にタオルやショールを巻いてもいいと思います」

 「アメちゃん」と称して「アメ」を常に持ち歩いている中高年以上の女性を時折見かけるが、どうやら「せきストレス」軽減には良さそうだ。

――迎教授「刺激そのものを緩めるために、姿勢にも気を付けてみてください。特に首や背中を少し前かがみにしたり、体の向きによっては『せきの出にくい姿勢』を見つけられる場合があります。ベルトを緩めておなかに力を入れすぎないようにすることでも、せきを和らげられることがあります」

 症状が「せき」だけで、それを和らげられるなら医療機関に行かなくてもよさそうにも思える。そもそも軽い「せき」症状だけでも気軽に受診していいものなのだろうか?

――迎教授「患者さんが医療機関にかかる理由の上位1、2位に必ず『せき』が上がってきます。それだけ身近な症状ですので、『せき』をよく理解して患者さんを診ている医師は少なくありません。たとえば、前かがみでせきが出やすいなら『胃食道逆流症』、仰向けに寝てせきが出るなら、のどの奥に大量に鼻水が流れ込む『後鼻漏』を疑うといったように、体位による症状の変化でも原因を特定する助けになることがあります。

 たとえ軽い症状でも『普段からせきが出やすい』と感じたら、一度は精密検査を受けておくことをオススメします。重篤な疾病が隠れていることがありますから」

 特に「肺結核」は、いまだに日本で年間約1万4000人が新たに発症。多くは微熱や「せき」を伴う。本人はもちろん、他人への感染も厄介な疾病だという。

 生死に大きく関わる「がん」も忘れてはいけない。

――迎教授「『肺がん』は進行するまでなかなか症状が出ず医者泣かせの分かりづらい疾患ですが、『喉のがん』は『せき』が出たり声がかすれたりするので分かります」

 「せき」を伴う疾患は実に多いようだ。決して「たかが『せき』」と侮れないのだ。

――迎教授「『せき』や『たん』は体からの警告信号だということを心に留めて、2週間を目安に治まらないようでしたら、医療機関を受診していただきたいですね」

 迎教授によると、「マスクは、不織布でも布タイプでもせきをする人間が着用すれば、効果的な感染予防ツール」だ。ツバやたんなどの水分を含むせきはマスクに引っかかりやすく、飛びにくいらしい。

 「せき」による体からの警告サインを気にするのはもちろんだが、「せきエチケット」として「マスク着用」「せきが出るときは腕や袖で押さえる」「人のいないほうを向いてせきをする」「必ず換気をする」といったことを心がけることで、「せきをする」「せきを聞く」両者の「せきストレス」が軽減するように心がけたいものだ。

<せきストレス解消のルール>

(1)

「せき」は体にとって、異物を排出する「防御反応」。ムリヤリ止めてはいけない

(2)

「せき」は、なんらかの病気がベースに隠れているという「体からの警告信号」でもある。素人で判断せず、受診すべし

(3)

「せき」1回のカロリー消費は大きく、体に負担をかける。「体を消耗させない」という意味でも早めに治療すべし

(4)

乾燥による「せき」をやわらげるには、マスクやタオルなどで喉を温めたりアメで気道を潤そう

(5)

外出先ではマスク着用などの「せきエチケット」を守ろう


(イラスト:斎藤ひろこ[ヒロヒロスタジオ]/図版:増田真一)

迎寛(むかえ ひろし)さん 長崎大学病院副病院長。長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科 展開医療科学講座 呼吸器内科学分野(第二内科)教授
迎寛(むかえ ひろし)さん 1985年長崎大学医学部卒業後、長崎大学医学部第二内科、宮崎医科大学第三内科を経て、97年カナダブリティッシュコロンビア大学 Pulmonary Research Laboratory留学。2007年長崎大学大学院医歯薬学総合研究科准教授。09年産業医科大学医学部教授。15年長崎大学大学院教授、19年長崎大学病院副病院長に。
結城未来(ゆうき みく)
エッセイスト・フリーアナウンサー
結城未来(ゆうき みく) テレビ番組の司会やリポーターとして活躍。一方でインテリアコーディネーター、照明コンサルタント、色彩コーディネーターなどの資格を生かし、灯りナビゲーター、健康ジャーナリストとして講演会や執筆活動を実施している。農林水産省水産政策審議会特別委員でもある。

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