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ストレス解消のルール

抗酸化が鍵! 気になる体の「サビ臭」はバランス食と睡眠で撃退

ニオイストレスから解放されるためのルール

 結城未来=健康ジャーナリスト

暑くなると「ニオイ」が気にならないだろうか。人のニオイは印象を大きく左右する。それだけに、自分のニオイを気にしすぎる「ニオイストレス」に陥るビジネスパーソンも少なくないようだ。特に夏は、ニオイを体内で発生・放出・感知しやすいという三悪条件がそろう「体臭シーズン」だ。そして、その夏に、汗のニオイと並んで強まりやすいのが「サビ臭」。皮脂の酸化(サビ)によって生じる古い油のようなニオイだ。対人関係のキーになるニオイストレスから解放されるためのルールを、健康ジャーナリストの結城未来が五味クリニック(東京・新宿)の五味常明院長に教わった。

写真はイメージ=(c)liza5450-123RF

 先日、初めて仕事をすることになったA氏の印象を同僚たちに聞いてみた。すると、「あぁ、近づいてくるとニオイで分かる人ね」「A氏がいなくなっても、しばらくニオイが残る」「夏は特にキツイ」と、A氏がまとっている強い香水の香りについてのコメントばかりが飛び出し、働きぶりについてはいっこうに聞き出すことができなかった。A氏は40代後半。自分のニオイを気にしすぎて、強い香水の香りに頼っているようだ。人のフリ見て我がフリ直せ。こうなると、自分も周りの空気を汚していないかと気になってしまう。

蒸し暑くなるとニオイが気になるのはなぜ?

――五味院長「加齢臭は通常40代から目立ち始めますから、その人も気にしているのでしょうね。ただ、夏は、若い人でもニオイが気になると思いますよ」

 なぜ、この時期、ニオイが気になるのだろうか? そういえば、先日、地下鉄の通路を歩いていたら、いつも通る場所にもかかわらずニオイが気になって仕方なかった。生ゴミのニオイも、冬よりは夏のほうが断然気になる。

――五味院長「高温多湿になると、ニオイを強く感じるようになるんです。冷凍したものは臭いませんよね?ニオイ分子は気温が上昇すると拡散しやすくなります。湿度が上がると水の分子と一緒になることでさらに空中を飛びやすくなるので、鼻の中にも飛び込んできやすいのです」

 やはりこの時期、ニオイが気になるのは気のせいではなかったようだ。

――五味院長「ただでさえ、暑い時期は皮膚上の雑菌が繁殖しやすく、汗のニオイが強くなる時期です。この汗臭さに皮脂腺からの『サビ臭』がプラスされたら、イエローカードですね」

 「サビ臭」!? 極めて悪そうな響きだ。

――五味院長「悪いですよ。人の体は、活性酸素による酸化ストレスによって『サビ』ついていきます(*1)。その影響で出るニオイだから私はこれを『サビ臭』と呼んでいます。つまり、サビ臭は体が酸化したニオイなんです……。古くなった食用油は酸化して臭くなりますよね。人間も同じなんです。人間の皮膚は『皮脂』によって潤いを保っていますが、体内から出てくる脂も酸化すれば、古い油のようなニオイになるのです。加齢臭もサビ臭の一つ。このニオイは、体からの警告サインでもあります」

夏は「サビ臭」が生じる条件だらけ

 自分が古い油のニオイをさせている可能性があるとは、ショックだ。これが警告のサインとは、どういうことだろうか?

*1 活性酸素の産生が、その傷害から体を守る抗酸化防御機構を上回った状態のこと

――五味院長「私たちが呼吸をして体内に取り込んだ酸素の一部は、活性酸素になります。過剰な活性酸素は細胞を傷つけ、DNAやたんぱく質、脂質などの生体成分を酸化させる、つまり『サビさせてしまう』のです。そのため、体内には抗酸化物質が常備されていて、酸化ストレスを抑えています。しかし、加齢などによる体内の抗酸化物質の減少で、体はどんどん酸化しサビてしまうのです」

 どうやらサビ臭は、皮膚表面の皮脂が空気に触れて酸化するのではなく、体内の酸化が進むことで出てくるようだ。

――五味院長「そうです。加齢による体の変化や生活の仕方によって、皮脂腺にある皮脂の酸化が進むことで生じます。皮脂が酸化しているということは、体内の細胞や血液中の脂質(脂肪酸やコレステロール)も酸化してしまっているということ。血管内にたまったLDLコレステロールが酸化してできる過酸化脂質(*2)は動脈硬化などの原因となります。過酸化脂質が増えると、体内も皮脂も酸化が進み、サビ臭が一層強まるという悪循環に陥ります」

 つまり、サビ臭は生活習慣病のリスクの高まりを示すサインなのだ。

――五味院長「実際、サビ臭は動脈硬化などの生活習慣病を持っている人に多いですよ」

 体から出るニオイが体内の変化と大いに関係があるとは驚きだ。

――五味院長「例えば、女性は幼い頃には良いニオイがするんです。これは、ピーチやココナツのような甘い香り『ラクトン』と呼ばれるニオイ成分によるもの。0歳から増加し、10代後半をピークに加齢とともに減少します。ラクトンの減少も、酸化が原因と考えられます」

 体内の酸化が進まなければ、実際の年齢よりも体内年齢は若く、良いニオイを保てるということだろうか?

――五味院長「その通り! 甘い香りとまではいかなくても、嫌なサビ臭を発生させることはありません。実際、実年齢と体内年齢が違う人は大勢います。健康長寿な人は体内年齢も若いですし嫌なニオイもしないので、自然と周りに人が寄ってきますよね。逆に、若い頃からサビ臭を出してしまっている人もいますよ。特にこの時期は要注意です」

 この時期というのは、夏の蒸し暑い時期ということだろうか?

写真はイメージ=(c)PaylessImages-123RF

――五味院長「夏は体を酸化させてサビ臭を出す落とし穴があちこちに転がっているんです。汗がうまくかけず体温調節がうまくいかなくなると、体は疲れて夏バテになり、同時に体は酸化しやすくなります。『夏の強い紫外線』『過度な飲酒や喫煙』『ストレスや睡眠不足』も過剰に活性酸素をつくり、体を酸化・サビさせる大きな要因と考えられます」

 強い紫外線が降り注ぐ山や海へ行き、青空の下で飲むビールは最高だ。しかし、夏休みなどで楽しく遊び過ぎると、睡眠不足になることも多い。夏は体をサビさせて老化への扉を開く誘惑だらけなのだ。

――五味院長「夏を謳歌し過ぎて体がサビてくれば、不快なサビ臭が強まります。ご家族や同僚に嫌な顔をされたら、『体内の老化』を疑ったほうがいいですよ」

 ……そんな事態になる前に、なんとかしたいものだ。夏の誘惑を断ち切れないとしても、救済策はないのだろうか?

「抗酸化物質の多い食品」の摂取を

――五味院長「抗酸化物質の多い食品を意識して食べるように心がけてください。ビタミンCは人間の体内で作ることもためておくこともできません。毎食、とるようにすることは大切です。女性ホルモンは酸化を抑える働きがあるので、女性ホルモンを増やすために男女共に大豆や納豆などを食べるのもいいと思います」

<主な抗酸化物質と、抗酸化物質の多い食品>

  • ビタミンC」:コマツナ・ホウレンソウ・パセリ・赤/黄ピーマンなどの緑黄色野菜、レモン・キウイ・オレンジ・アセロラなどの果物
  • ビタミンE」:胚芽米玄米
  • ポリフェノール」:カテキン(お茶)、リグニン(ココア)、イソフラボン(納豆大豆

※五味院長の話を基に作成


写真はイメージ=(c)Teri Virbickis-123RF

――五味院長「サビ臭を抑えるには紫外線対策を怠らないこと、喫煙や過度な飲酒を控えること、睡眠をしっかりとることなどが大事。中でも意識してほしいのは、食べ物の選び方だと私は思います。偏った食事や酸化した油など体をサビさせる食品を避け、抗酸化物質を多く含んだ食品を食べるように心がけることは、サビ臭を抑え、生活習慣病のリスクを減らすことにもつながると考えられます」

 「ニオイ」には、理由があったのだ。エチケットとしてニオイを気にする前に、「サビ臭」を出さない生活が、夏の太陽のような元気と好感の持たれる印象づくりにつながりそうだ。

*2 コレステロールなどの脂質が、活性酸素によって酸化されたものの総称
<「サビ臭体質」にならないためのルール>

(1)

紫外線対策をしっかりとしよう

(2)

飲酒と喫煙はほどほどに

(3)

睡眠はしっかりととり、ストレスを減らす

(4)

抗酸化物質を多く含む食品を積極的に食べる


五味常明(ごみ つねあき)さん
五味クリニック 院長
五味常明(ごみ つねあき)さん 1949年生まれ。昭和大学医学部卒業。昭和大学病院形成外科、多摩病院精神科勤務などを経て、84年より現職。体臭・多汗研究所所長。流通経済大学スポーツ健康科学部客員教授。著書に「気になる口臭・体臭・加齢臭」(旬報社)、「なぜ一流の男は匂いまでマネジメントするのか?」(かんき出版)など。
結城未来(ゆうき みく)
エッセイスト・フリーアナウンサー
結城未来(ゆうき みく) テレビ番組の司会やリポーターとして活躍。一方でインテリアコーディネーター、照明コンサルタント、色彩コーディネーターなどの資格を生かし、灯りナビゲーターや健康ジャーナリストとして講演会や執筆活動を実施している。
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