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ストレス解消のルール

つらい体験は言葉にしてみる ストレス和らぐ心の整理術

ストレスと上手に付き合うためのヒント

 結城未来=健康ジャーナリスト

B:嫌なことがあって、そのストレスで苦しんでいるなら……

――内山教授「何か嫌なことがあって、それについてストレスを抱えている場合、『誰かに言葉で語ること』ができれば、モヤモヤした苦しい気持ちから逃れることができます。1人で思い悩むのはつらいものです」

 そういえば、私もつらいことがあると、誰かに話を聞いてもらうことで少し楽になることが多い。

――内山教授「そうですね。これは、男性より女性の方が上手に利用しているストレス対処戦略です」

 とはいえ、高ぶった感情を誰かにぶつけて発散しているように思えることもある。

――内山教授「もちろん、『話を聞いてもらって理解される』という面もあります。これに加えて重要なのが、話す相手に分かってもらえるように話を組み立てていく中で、少しずつ『嫌な気持ちとの距離がとれる』ことなのです」

 「言葉にする」ことには、大切な意味があるようだ。

――内山教授「例えば学生が、同じクラスの付き合っていた彼女と別れてしまったとします。同級生から『お前、別れたんだってな』と言われると、初めのうちは別れたことを言葉にできないので、『そんなに単純なことじゃないよ』などと反論して、そのことに触れるのを避けるのが普通です。うまくいかなくなった時の何とも言えないつらい気持ちが頭の中で再現されてしまうのが嫌だからです。記憶の中に嫌な体験が生々しいまま残ってしまっているのでしょう」

 「言葉で表せない」=「心の整理がついていない」=「つらい体験が生々しく記憶にとどまっている」=「何かにつけてその時の嫌な気持ちが思い出されてしまう」ということらしい。

私たちは様々な体験を記憶の箱に入れて整理している。写真はイメージ=(c)AnikaSalsera-123RF
[画像のクリックで拡大表示]

――内山教授「私たちは頭の中で、出来事についての複雑な体験や気持ちを記憶の箱の中に入れて整理していると考えたらよいでしょうか。整理には少し時間がかかります。まだ整理ができていない段階だと、『(彼女と別れたことは)そんなに単純なことじゃないよ』という返答になってしまうのです」

 嫌な体験をしたら「忘れることが大切」「記憶から消し去ることが大切」だと思いがちだ。実際、つらい体験を思い出すような会話になったときに、「あぁ、あのことはもう忘れたから」、つまり記憶から消したと言い放ちがちだ。それに対して、「記憶の箱に入れる」ということは、「消すのではなく残しておく」こと、つまり「何かあるたびに思い出す」ことにならないのだろうか。

――内山教授「『記憶を消す』というよりも、『思い出しても平気なように記憶を整理する』と考えた方がよいでしょう。記憶の箱に入れただけの状態では、ちょっと思い出すたびに記憶の箱の中身、つまり体験や気持ちを見てしまうことになります。中を見てしまうと、実際に体験したつらい気持ちまで再現されてしまう。『記憶の箱を整理する』というのは、外から見ただけで箱に入っている出来事が分かるように、記憶の箱にラベルを貼って短いタイトルを書いておく作業です」

記憶の箱にラベルを貼るのはなぜ有効?

 「タイトル」というのは、「出来事を象徴する言葉」ということだろうか?

――内山教授「そうです。自分史の単なる一つの出来事にしてしまうには、ピッタリくるタイトルが必要です。『お互い気持ちが子どもだったせいで彼女と別れた』というように出来事の箱にタイトルをつけてしまえば、いちいち箱を開けて中身を確認する必要がありません。中身を見なければ、その時のつらい気持ちもよみがえってきません。過去の一つの出来事として思い出すことができます。

 納得のいくタイトルをつけることは、『言葉で整理する』ことになります。これが、心の整理につながるのです。さまざまな出来事や体験にタイトルをつけて体験や気持ちを整理してしまうことは、言葉を介した心の治療、つまり精神療法の重要なポイントです」

 逆に、楽しい思い出なら、「より鮮明に思い出して、明日への活力にしたい」と感じている人も少なくないだろう。

――内山教授「確かに、嫌なことは思い出したくなくても、『うれしかった時の感動』は思い出したくなるものです。例えば、学生時代に大きな大会で優勝した経験があり、その時の感動を当時の仲間たちと共有したいと思ったとしましょう。皆で集まって『あの時優勝してよかったな』と話すだけでは、うれしかった気持ちや感動はなかなかよみがえってきません。この出来事の記憶の箱には『優勝した素晴らしい体験』というタイトルがついているのかもしれませんが、こうした事実だけではうれしい気持ちまではよみがえりません。そういう時に役立つのが、映像や写真です。当時撮影した映像を仲間で見れば、少しずつ箱のフタが開いて、一時的にでもその時の感動をみんなで分かち合えることにつなげられると思います」

聞き手選びは重要

 思い出したい記憶、思い出したくない記憶、どちらも、記憶の箱にタイトルをつけて整理できていれば、気持ちのコントロールをしやすいようだ。過剰なストレスを軽減するにはとても大切な作業とも言える。

 では、記憶の整理に大切な「言葉にする」ためには、誰に話をすればよいのだろうか? 退社後に同僚と飲みながらグチをこぼすことが、ストレス発散になっているビジネスマンもいることだろう。

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