日本経済新聞 関連サイト

ようこそ ゲスト様
日経Gooday TOP  > からだケア  > ストレス解消のルール  > ストレスはないより多少あるほうがいい じつは心の健康に不可欠  > 3ページ目
印刷

ストレス解消のルール

ストレスはないより多少あるほうがいい じつは心の健康に不可欠

決して悪者ではない、ストレスの正体

 結城未来=健康ジャーナリスト

――内山教授「ストレスで疲れることが続いても、私たちには回復する機能があります。『休養』です。私たちは1日の4分の1から3分の1は眠って過ごします。睡眠は休養のうちの『休』の部分として重要です。楽しみを積極的に得る、気分転換をするというのが休養のうちの『養』の部分。

 先ほど話題になったように『心の健康』とは、ストレスが全くないという現実離れした状態ではなく、『ストレスと休養、負荷と回復のバランスがとれた状態』なのではないかと思います」

疲れて休みたくなるのは心身の「安全弁」

 心の健康とは「常に元気で走り続けること」だと思っていたが、そうではないということだろうか?

――内山教授「自分で疲労に気付くことが大切。常に100%元気でいるのは、長い目で見ると危険です。心身が疲弊してしまいます。患者さんや知人など、社会で頑張ってきた人たちと話をしていると、『世の中には頑張り屋、優秀な人がたくさんいるけれども、最後は体が丈夫でなくちゃ』という声が目立ちます。つまり、『無理をして頑張り続けたために途中で体を壊してしまい、第一線から遠のいていく人が多かった』というのです。困難やストレスに常に全力で立ち向かい走り続けていくことは、安全弁がうまく働いていないとも考えられるかもしれません」

 「安全弁」というのは?

――内山教授「『疲労を感じる』ということは、心身を守る大切な『安全弁』なのだと思います。疲れると体を休めたくなるし、気持ちの面でも仕事を先延ばしにしたくなる。これが安全弁。疲労がなかったら、本当に体が壊れるまで気づきませんから」

 安全弁である疲労を感じて休養すれば、回復できる。ストレスと休養による回復のバランスを保てる。これを繰り返すことが、心の健康につながるのだという。思えば、私は特にストレスの多い仕事が山積みになると、家でグッタリとしてしまうことが多い。

――内山教授「私の休日も同じです。自宅で勉強ができないのは机や椅子のせいかと思って最近買い替えてみましたが、ダメですね。仕事がたまっているのに、家に帰るとどうでもよくなって、テレビを見るなどダラダラ過ごしてしまいます。パーッとどこかに行ってリフレッシュできればと思うのですが……。そういう意味で休養の『養』の部分はうまくとれていませんが、『休』の部分がとれているからうまくやっていられるのだろうと自分を慰めています」

 実は私も、「やらなければいけない」と思ってはいても、ついつい先延ばしにして怠けてしまうことが多い。そんな意志の弱い自分を責めることもある。

「やらなきゃ」と思いつつも、いつまでもダラダラ…。実は決して悪いことではない?写真はイメージ=(c)baranq -123RF

――内山教授「意志が弱いのは、必ずしも悪いことばかりではないと思います。疲れているのに意志を強く持って何でもかんでも全力で取り組んでしまうと、結果的に健康を害すことになりかねません。『やらなきゃいけない』と思いながらも休んでしまう意志の弱さは、『疲れている時に働く体の安全弁』です」

 怠け者の自分を肯定してもらえると、前向きな勇気をもらえる。

――内山教授「最終的な目標は『心が健康になる』ことです。ストレスについて考える時には、ストレスだけに注目してこれをなくすのではなく、『心の健康』という視点で『ストレスと休養とのバランスがとれているか』を考えてほしいです」

 冒頭でも触れた通り、この連載のタイトルは「ストレス解消のルール」。だが、ストレスの正体が「生きがい」につながる人生のハードルであったり、ストレスによる疲労が心身を壊さないための「安全弁」であるなら、本当に目指すべきは「ストレス自体をなくすこと」ではなく、「ストレスを認識して、それとうまく付き合っていくこと」だろう。ぜひ、そう読み取っていただき、ストレスと休養とのバランスを見直してほしい。次回は休養のコツについて、さらに内山教授にお話を伺っていく。

(図版作成 増田真一)

内山真(うちやま まこと)さん
日本大学医学部精神医学系主任教授
内山真(うちやま まこと)さん 1954年生まれ。東北大学医学部卒業。ドイツ留学、国立精神・神経センター(現・国立精神・神経医療研究センター)精神保健研究所精神生理部部長などを経て、2006年より現職。日本睡眠学会理事長、日本臨床神経生理学会理事、日本時間生物学会理事など。『睡眠のはなし』(中公新書)、『睡眠学の権威が解き明かす 眠りの新常識』(KADOKAWA)など著書多数。NHK「きょうの健康」をはじめ、メディアへの出演も多い。
結城未来(ゆうき みく)
エッセイスト・フリーアナウンサー
結城未来(ゆうき みく) テレビ番組の司会やレポーターとして活躍。一方でインテリアコーディネーター、照明コンサルタント、色彩コーディネーターなどの資格を生かし、灯りナビゲーター、健康ジャーナリストとして講演会や執筆活動を実施している。

先頭へ

前へ

3/3 page

RELATED ARTICLES関連する記事

からだケアカテゴリの記事

カテゴリ記事をもっと見る

FEATURES of THEMEテーマ別特集

  • 「ウォーキング」「ジョギング」 大きな健康効果を得るための小さなコツ

    ウォーキングやジョギングなどの「有酸素運動」には、「コロナ太り」の解消や、生活習慣病の予防、免疫力アップなどが期待できる。ただし、漫然と歩くだけでは運動効果は低いし、かといって本格的なジョギングは運動初心者にはハードルが高い。そこで運動効果の上がる歩き方と、初心者でもできる走り方のコツを紹介する。

  • 悩ましい「老眼」「飛蚊症」「ドライアイ」への対処法

    放っておいても失明につながる心配はないものの、日常生活に不便をもたらしたり、疲れや肩こりなどの体の不調を引き起こす、悩ましい目の症状。今回は、そうした「ちょっと困った目の症状」の代表例である「老眼」「飛蚊症」「ドライアイ」への対処法をまとめていく。

  • 「眠れない」を解消して抵抗力を高める、3つのNGと6つのテク

    暑い夜でもぐっすり眠るにはどうすればいいのか。そもそも睡眠は何時間とればいいのだろうか。今回のテーマ別特集では、不眠を解消するための3つのNGと、6つの快眠テクニックを紹介する。

テーマ別特集をもっと見る

スポーツ・エクササイズSPORTS

記事一覧をもっと見る

ダイエット・食生活DIETARY HABITS

記事一覧をもっと見る

からだケアBODY CARE

記事一覧をもっと見る

医療・予防MEDICAL CARE

記事一覧をもっと見る

「日経Goodayマイドクター会員(有料)」に会員登録すると...

  • 1オリジナルの鍵つき記事鍵つき記事がすべて読める!
  • 2医療専門家に電話相談できる!(24時間365日)
  • 3信頼できる名医の受診をサポート!※連続して180日以上ご利用の方限定

お知らせINFORMATION

日経Gooday新型コロナ特設

SNS

日経グッデイをフォローして、
最新情報をチェック!

RSS

人気記事ランキングRANKING

  • 現在
  • 週間
  • 月間

NIKKEICopyright © 2020 Nikkei Inc. All rights reserved.