「利便性」だけじゃない! オンライン診療の本当の実力
行動変容を促し、生活習慣病を改善
荒川直樹=科学ライター
医療分野の満たされないニーズ(アンメット・メディカル・ニーズ)についての治療分野の革新に焦点を当てていく本連載。今回は、インターネットを通じて医療行為を行う「オンライン診療」がテーマ。2018年から病気の種類や一定の要件を満たせば保険診療ができるようになった。診療システムとアプリを開発したインテグリティ・ヘルスケア代表取締役会長の武藤真祐医師に、オンライン診療に今後期待される役割を聞いた。便利になるだけではなく、患者自身が自分の健康管理について高い意識を持つようになり、さまざまな病気の予防、早期治療を実現することも可能だという(聞き手・企画:藤井省吾=日経BP総研 メディカル・ヘルスラボ所長)。
情報通信技術(ICT)の進歩は医療の世界にも大きな変革をもたらそうとしている。その一つが、インターネットを通じて医療行為を行う「オンライン診療」だ。2018(平成30)年度診療報酬改定により、公的医療保険でオンライン診療が受けられるようになった。オンライン診療は、高血圧症や脂質異常症などの慢性疾患で、定期的に通院している患者の利便性を高めると期待されている。忙しい人が診療所へ行く負担を減らす、介護が必要な人を家族が診療所に連れて行く負担を減らすといった効果が期待されている。
オンライン診療にはさまざまなシステムが登場しているが、武藤医師が開発に関わった「YaDoc(ヤードック)」の機能は「オンライン問診」「モニタリング」「オンライン診察」から構成される。オンライン問診は、疾患別に用意された質問項目を画面の説明に従って入力するもの。モニタリングは、患者が家庭で体重や血圧などを測ってデータを入力し、情報を医師と共有する機能だ。そして、オンライン診察はいわばテレビ電話による診察。予約した診察時間になると医師からコールがあり、電話をとる感覚で診察開始。お互いの顔を見ながら会話ができる。
武藤さんがオンライン診療の重要性に注目するようになったきっかけについて教えてください。
武藤 オンライン診療に注目するようになった理由は3つあります。まず、私は、循環器専門医として20年間を過ごし、その間に入院、外来、在宅と幅広い立場で患者さんを診てきました。そのなかで感じていたのは外来診療の限界でした。医師は、果たして患者さんの本当の状態をどれほど分かった上で診療できているのかという疑問を感じたのです。