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未来を変えるアンメット・メディカル・ニーズ最前線

アトピー性皮膚炎の期待の新薬、根本的な治療になる可能性も

第2回 発症機序にピンポイントに作用、かゆみを抑えて症状の悪循環を解消

 荒川直樹=科学ライター

根本的な治療になる可能性もある

 投与方法は、通常、成人(現在は15歳以上)は初回に600mg、2回目以降は300mgを2週に1回皮下注射するというもの。注射部位は上腕部(二の腕)の外側、へそ周りを除いた腹部、太腿などだ。現段階では自己注射が認められていないので、治療を続けるためには、2週間に1度通院する必要がある。

 ガイドラインによれば「治療を開始して完治に近い状態が6カ月以上続いたら休止することも検討する」とある。これについて佐伯氏は「デュピルマブを休止しても皮膚の状態がきれいに保たれることが多いことも分かってきました。私の患者でもEASIスコア(皮膚の状態を示す客観的なスケール/第1回参照)がゼロにまでなった人で、長い期間休止しても再発しない例もありました」と話す。

 こうした症状の安定化をもたらしているのはデュピルマブによるバリア機能の改善だ。アトピー性皮膚炎では、免疫細胞からの指令を伝達する「IL-4」や「IL-13」と呼ばれる物質(サイトカイン)によって、バリア機能に重要な役割を果たしているフィラグリンという物質の量が減る。デュピルマブの投与によりフィラグリン量が回復することで、バリア機能が上がり、湿疹も出にくくなるという「良い循環」が回り始めると考えられる。結果、注射をやめてもEASIスコアが良好な状態を維持するのだ。「患者によっては、根本的な治療になる可能性があります」(佐伯氏)という。

図 デュピルマブがアトピー性皮膚炎に効く仕組み
図 デュピルマブがアトピー性皮膚炎に効く仕組み
アトピー性皮膚炎のアレルギー症状の際には、ヘルパーT細胞のうち2型のTh2細胞が働いている。この細胞が出すIL-4とIL-13という物質(サイトカイン)が、皮膚に働いてバリアを損ない、炎症も誘発させている。
デュピルマブは、IL-4とIL-13だけをピンポイントでブロックしてしまうので、バリアも回復し、炎症も改善し、皮膚の状態がよくなる。(図版制作:三弓素青、2点とも)
デュピルマブは、IL-4とIL-13だけをピンポイントでブロックしてしまうので、バリアも回復し、炎症も改善し、皮膚の状態がよくなる。(図版制作:三弓素青、2点とも)

 ただし「一方で、やめどきは難しいと指摘する声もある」と田中氏。一般的に、抗体医薬(*1)の特徴の一つとして、休止と再開を繰り返すと、薬剤の効果が減弱する可能性があるからだ。短期間で再悪化しないような状況で休止するのが望ましいということだろう。そのため、EASIスコアがどれぐらいまで下がったら中止を検討できるのかなど、これからの研究課題でもある。

*1 抗体医薬:病気の原因物質に対する「抗体」を、バイオ技術を用いて人工的に作り出し、体内に入れて病気の予防や治療を行う薬のこと(参考:日本製薬工業協会ホームページ)
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