インフルエンザ、例年より早く流行か? 早めのワクチンで重症化予防
田村知子=ライター
10月上旬現在では、お住まいの地域によって、流行の度合いがかなり違っていると思います。すでに流行が広まりつつあるのを実感している人もいれば、身近にインフルエンザを発症している人はまだいないという人もいるでしょう。いずれにしても、行楽シーズンの秋は人の移動が多くなります。また、今年はラグビーワールドカップが日本で開催されており、オーストラリアやニュージーランド、南アフリカなど、日本とは季節が逆で、インフルエンザが流行していた南半球からの旅行者も多く訪れています。まだ流行が始まっていない地域でも、予防対策はしておいたほうがいいでしょう。
ワクチン接種の目的は、重症化を防ぐこと
インフルエンザの予防にはどのような対策が有効ですか。

まずは、ワクチンの接種です。特に、インフルエンザにかかると重症化しやすい乳幼児や高齢者、呼吸器に基礎疾患がある人、免疫が低下している人などは、接種しておくといいでしょう。インフルエンザのワクチンは、接種してから抗体がつくまでに約2週間かかります。ワクチンの接種は10月から始まっていますので、お住まいの地域で流行が始まっている場合は、早めの接種が勧められます。
ただし、インフルエンザのワクチン接種は、あくまでも重症化を防ぐことが目的です。ワクチンを接種したとしても、感染することはあります。
早めにワクチンを接種すると、流行が続く春先まで効果が持たないのでは?と考える人もいるようです。そのため、1シーズンに2回接種をしたほうがいいのだろうかと悩む声も聞かれます。
どんなワクチンでも時間がたてば、徐々に抗体価が低下して、予防効果が薄れていきます。麻疹(はしか)や風疹のように感染を防ぐことが目的のワクチンで、明確な抗体価の目安があるものの場合は、それを維持するために複数回の接種を行います。しかし、インフルエンザのワクチンはそもそも重症化を防ぐことが目的であり、抗体価の目安はありません。2回接種すれば効果が高まるという根拠も特になく、健康な大人の場合は、1回の接種が基本と考えればよいでしょう。
ちなみに、日本の小児科では、生後6カ月以上、13歳未満では、2回接種が推奨されています。WHO(世界保健機関)では生後6カ月から9歳未満で初めて接種する場合は2回で、翌年からは年1回の接種を勧めていて、国際的に共通のルールがあるわけではありません。
ワクチンを接種したとしても、手洗いなど日常的な予防も必要ですね。
その通りです。インフルエンザの主な感染経路はくしゃみや咳(せき)による飛沫感染ですが、ウイルスが付着した物やドアノブ、手すり、つり革などを手や指で触れ、その手や指で鼻や口、目を触ることでも感染しますので、こまめに手を洗う習慣をつけましょう。アルコール性手指衛生剤での洗浄も有効です。
また、インフルエンザの感染を疑うときや、発症してしまったときには、マスクを着けるようにすると、感染を広めるのを防げます。マスクを外したあとにも、手洗いを忘れないようにしてください(詳細は駒込病院ウエブサイト内「なぜインフルエンザにかかってしまうのか?~原因から考える予防法~」)。
がん・感染症センター都立駒込病院感染症科部長
