風疹は今や大人の感染症、30代以上の男性が多く発症
妊婦の感染には厳重な注意が必要
田村知子=ライター
先天性風疹症候群(congenital rubella syndrome:CRS)は、風疹の母子感染により、生まれた赤ちゃんに難聴や白内障、先天性心疾患などを起こします。2012~2013年の流行時には、45例の先天性風疹症候群が確認されています。ただ、これはあくまで報告数なので、軽症で先天性風疹症候群と診断されていない場合なども含めると、もっと多く発症していることが推測されます。45例の中では残念ながら、その後に命を落としたケースも複数あります。
今年も既に報告がありますが、先天性風疹症候群の症状は出産後しばらくたってから気づくことが多いので、今後さらに報告数が増えていく可能性があるでしょう。
妊婦の感染に厳重な注意が必要と聞くと、男性や子育て世代以外の人はあまり関係がないと思ってしまうかもしれません。しかし、妊婦と接する可能性があるすべての人が、風疹を予防することが、先天性風疹症候群を防ぐことにつながります。
風疹の予防には、どのような対策が有効ですか?
風疹の感染経路は咳(せき)やくしゃみなどによる飛沫感染なので、空気感染する麻疹に比べると、感染力は低いといえます。ただし、同様に飛沫感染するインフルエンザと比べた場合は、風疹の方が2~5倍感染しやすいといわれています。
風疹は麻疹と同じように、ウイルス疾患ですが治療薬はありません。ですから、ワクチンでの予防が最も有効な対策となります。風疹のワクチンは、1回の接種で約95%、2回の接種で約99%の人が免疫ができるとされています。
ただし、ワクチンを2回接種しても、十分な免疫がつかない人もいます。また、妊婦にはワクチンの接種ができません。インフルエンザのワクチンは、ウイルスの毒性を完全になくした不活化ワクチンなので妊婦でも接種できますが、風疹のワクチンはウイルスの毒性を弱めた弱毒生(なま)ワクチンのため、妊婦には接種できないのです。その意味でも、妊婦と接する可能性がある人が、ワクチンを接種して予防することが重要です。
30代以上の男性は特にワクチンの接種を
特にワクチンを接種しておきたいのは、どのような人でしょうか。
妊娠を希望している女性は、妊娠前にワクチンを接種しておくことが大切です。ただ、ワクチンの接種後2カ月間は、避妊の必要があります。妊娠前、妊娠中の女性と暮らす家族も、ワクチンを接種しておいてください。
そのほか、風疹にかかったことがない人、かかったかどうか分からない人、ワクチンを接種したことがない人、接種が1回のみの人、ワクチンを接種したことがあるか分からない人も、接種しておくことが勧められます。
自分が風疹のワクチンを接種したことがあるかどうかは、母子手帳での確認が確実です。確認できない場合は、図1の予防接種の状況と自分の年齢を照らしてみると参考になるでしょう。
この図を見ると、1990年4月2日より前に生まれた人は、ワクチンの接種が1回か、未接種だということが分かりますね。
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