私たちの体は異変を生じたとき、さまざまなサインを発する。それは、痛み、吐き気、出血などの自覚症状のこともあれば、健康診断の検査結果に表れることもある。このような体から得られる情報をどう理解するかが健康を守るために重要だ。今回のテーマは、糖尿病予備群でも心配な狭心症や心筋梗塞などのリスクをどう下げるか、について。

Episode 糖尿病“予備群”で安心していたら「狭心症」に…
学習塾などを展開する企業で教材開発を担当する宇都宮貴之さん(47歳)は、20代の頃と比較して体重が8キロ増えたことを気にしていた。2008年から始まった特定健診では、いつも「運動などで2キロほど体重を落として」と言われ続けているが、タバコは吸わないし酒もほどほど、体調は良好なので、週に1回ほど軽いウォーキングに励むことにしている。
昨年の検査の結果は、空腹時血糖値は120mg/dL、HbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)が6.3%、血圧は138/80mmHg、LDLコレステロールは125mg/dL。健診医は「いわゆる糖尿病予備群ですが、いずれも薬を飲むほどではないですね」と言うので、「まあギリギリセーフかな」と思っていた。妻も、「年相応なんじゃない」と言う程度だった。
そんな宇都宮さんの身に異変が起きたのは、9月のこと。肌寒い日に、遅刻しそうだったため駅の階段を駆け上ったところ、急に胸に嫌な圧迫感と不安感を感じた。ベンチに座っていると10分ほどで症状は治まったが、不安になり、翌週、休暇をとって循環器内科を受診した。
検査を終えた担当医は「早めに受診してもらってよかったです。初期の狭心症ですが、心筋梗塞のリスクはそれほど高くないように思えます。糖尿病は予備群でも動脈硬化を進め、狭心症、心筋梗塞、脳卒中のリスクを高めますので、治療を継続するとともに生活改善を心がけてください」と話した。
幸い、カテーテル治療(PCI:経皮的冠動脈形成術)などは必要なく、薬を飲むだけの治療ですんだが、宇都宮さんは「予備群を長く続けていたら、心筋梗塞などで命を落としていたかもしれない」と特定健診の結果を甘く見ていた自分を悔やんだ。
※ 取材をもとに、実際にあったケースから創作したエピソードです。