私たちの体は異変を生じたとき、さまざまなサインを発する。それは、痛み、吐き気、出血などの自覚症状のこともあれば、健康診断の検査結果に表れることもある。このような体から得られる情報をどう理解するかが健康を守るために重要だ。今回のテーマは、先進国への出張や旅行でも注意したい「はしか」の感染について。

Episode ニューヨーク出張で「はしか」に感染、同僚にもうつす
都内の金融機関に勤務する金子義隆さん(41歳)は、この夏、3年ぶりにニューヨークに出張し、投資アドバイザーと打ち合わせすることになった。
これまでは上司と一緒だったが、今回は一人ですべてをこなさなければならない。渡航前は入念な準備を重ね、寝るヒマもないほどだったが、その甲斐もあって仕事は順調、気の向いたときにはブルックリンの古酒場で一杯楽しむ余裕もできた。
1週間後に帰国すると、さすがに疲れがどっと出てきた。2日後には微熱が出てだるさもあったが「疲れのせいだろう」と、社内で出張報告を済ませた。
体に異変が起きたのは、その翌日だった。急に38度の高熱が出て動けなくなったのだ。これまで経験したことのないつらさと、体中にできた赤い発疹を見て、「これはただの風邪ではない」と思い、救急車を呼んだ。
運ばれたのは感染症科のある病院で、専門医による診断は「はしか」。金子さんは「なんだ、はしかか」と思ったが、病院には家族全員が呼ばれ診断と発症予防のためのワクチン接種が行われるという重大事に。
医師は勤務先に連絡するよう強く勧めたため、それに従った。嫌な予感がしたが、その予感は的中。発熱から10日後には金子さんの熱は下がったが、このとき同僚のうち3人がはしかを発症。ただでさえ仕事が忙しいのに、4人も病欠することになってしまったのだ。
さらに医師は「妊婦に感染したら流産のリスクが高まるところでした」という。金子さんは申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
日本ではあまり報道されていなかったため後で分かったことだが、昨年の秋以降、ニューヨーク市ははしかの流行で大騒ぎだった。4月には非常事態宣言も出されたという。そのことが分かっていて、はしか予防のためのワクチン接種を受けていればこんな思いをせずに済んだのにと、金子さんは後悔した。
※ 取材をもとに、実際にあったケースから創作したエピソードです。
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