私たちの体は異変を生じたとき、さまざまなサインを発する。それは、痛み、吐き気、出血などの自覚症状のこともあれば、健康診断の検査結果に表れることもある。このような体から得られる情報をどう理解するかが健康を守るために重要だ。今回は、自己免疫疾患の一種である「関節リウマチ」について。
Episode パソコンのやり過ぎではなく、関節リウマチだった!

土肥真紀子さん(仮名:48歳)は、衣料品の輸入販売を行う企業の契約社員として週3回、経理など事務作業をしている。健康には自信があった。職場で受けられる特定健診では、血液検査でリウマトイド因子という項目が陽性だったが、健診医が「とくに自覚症状がなければ大丈夫ですよ」と言うので気にすることはなかった。
そんな土肥さんに異変が訪れたのは1年半ほど前のことだ。朝起きたときに手にこわばりを感じ、手を握ったり開いたりしにくくなったのだ。ただ、このときも「仕事でパソコン作業が続いたためだろう」「年齢のせいかもしれないし」と放っておいた。
しかし、異変はやがて右の手首に広がり、重いものを持つと痛みを感じ、左右を比べると明らかに腫れているのが分かるようになった。夫の「食べ過ぎだから痛風じゃないの。病院に行ったら」という一言に怒りを感じながらも近くのクリニックを受診した。
レントゲン検査では異常はなかったが、1週間後に告げられた血液検査の結果は、「抗CCP抗体」という項目が陽性。医師は「関節リウマチの可能性があるので総合病院のリウマチ科に紹介状を書きますね」と告げた。
ショックだった。子どもの頃、伯母がリウマチを患っていて、晩年は家事はおろか歩くこともできないようになり、「痛い、痛い」と言いながら亡くなったのを覚えていたからだ。「もしリウマチだったら、家族の面倒を誰が見ればいいの」と不安でしょうがなかった。
受診したリウマチ科で担当医は、「指や手首など複数の関節に炎症があり、関節リウマチです」と告げた。しかし、同時に「早期に受診されてよかったです。今は薬による治療が進んでいますので、生活に支障が出るほど病気が進むことはまれですよ」と話してくれたので、少し安心することができた。
それからリウマトレックス(一般名:メトトレキサート)という薬を服用し始めたが、手首の腫れはなかなか治まらなかった。薬の量を増やしながら通院し6カ月たったとき、担当医は「効果が得られていないですね。次にアクテムラ(一般名:トシリズマブ)という生物学的製剤を2週間に1度皮下注射する治療を開始します」と説明してくれた。
「やっぱりダメかも」。再び落ち込む土肥さんだったが、3回目の注射をした後で、手首の症状がスーッと軽くなるのを感じた。
そして3カ月後の診察で担当医は「かなり効いています。もうちょっと頑張ってみてください」と話し、さらにその3カ月後には「病気は寛解(かんかい)という状態になりました。この状態なら今後、つらいリウマチの症状が出ることはありません。これからも根気よく治療を続けましょう」と話してくれた。
それまで心を覆っていたモヤモヤが一気に吹き飛んだ。今では夫の暴言も病気の早期発見につながった“お告げ”と思えるようになった土肥さんだった。
※ 取材をもとに、実際にあったケースから創作したエピソードです。
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