私たちの体は異変を生じたとき、さまざまなサインを発する。それは、痛み、吐き気、出血などの自覚症状のこともあれば、健康診断の検査結果に表れることもある。このような体から得られる情報をどう理解するかが健康を守るために重要だ。今回のテーマは、40~50代でも気をつけたい「狭心症」を取り上げる。

Episode 心筋梗塞で倒れた叔父。自身も心電図検査で異常が…
情報セキュリティに関するコンサルティング会社に勤務する杉山義隆さん(48歳)は、健康には人一倍気をつかうようにしている。理由は、5年前に叔父が心筋梗塞で倒れたからだ。
子供の頃にテニスを教えてくれた叔父とは同じテニスクラブに通っていた。5年前、叔父はテニスの最中に「胸がもやもやする」と訴えた。しばらく休んでいると5分ほどで症状は消えたので「疲れが溜まっているせいだろう」とそれほど気に留めなかった。
しかし、その症状は次の週にも現れ、叔父も「近いうちに病院に行くよ」と言っていたのだが、その2日後、心筋梗塞を起こし救急車で運ばれてしまったのだ。
以来、杉山さんは胸の症状には気をつかうようになった。特に異変がないので安心してテニスを続けていたが、健康診断だけはしっかり受けようと誓った。
会社が契約する医療機関で行う健診を受けたところ、今年、思いがけないことを指摘された。「心電図に異常が見られたので、一度、循環器内科で検査を受けてください」というものだった。
後日、受けたのは心臓CTという検査だった。
担当医は「心臓にある3本の冠動脈の1本で動脈硬化が進んでいます。分かりやすくいえば症状のない狭心症です。血液中のコレステロールが高いので、動脈硬化が少しずつ進んでいるのですが、残り2本の冠動脈が血流を補っているので、胸の痛みなどを感じることがなかったのでしょう。放っておけば、突然、心筋梗塞を起こすリスクがありますので、もう少し詳しい検査をしましょう」と説明してくれた。
幸い、1週間後に受けたカテーテル検査の結果では、すぐに積極的な治療を受ける必要はないとのこと。コレステロールを下げる薬を飲み続けながら生活改善に努めることになった。杉山さんは、ひと安心するとともに「もし心電図検査で発見されなかったら」と恐ろしさを感じたという。