私たちの体は異変を生じたとき、さまざまなサインを発する。それは、痛み、吐き気、出血などの自覚症状のこともあれば、健康診断の検査結果に表れることもある。このような体から得られる情報をどう理解するかが健康を守るために重要だ。今回のテーマは、タバコ病ともいわれる「COPD(慢性閉塞性肺疾患)」を取り上げる。

Episode 禁煙して10年以上経つのに… 人間ドックでCOPDを発見
証券会社に勤務する巣山弘道さん(48歳)は、33歳で結婚し、35歳で子供を授かったことをきっかけに生活習慣をガラリと改めた。まず、若い頃から吸っていたタバコをきっぱりとやめた。毎朝20分のウォーキング、週1回のジム通いなど体づくりにも余念がない。
おかげで10年以上、病気で欠勤したことは一度もなかったが、昨年末に風邪で苦しめられた。若い頃は、1日横になっていれば回復したものだが、微熱がなかなか収まらず、咳や痰も1週間以上続いた。
これも「疲れがたまっていたせいだろう」と軽く考えていたが、妻は「年も年だし、そろそろ人間ドックを受けて」と強く勧めた。
そこで、久しぶりに有給休暇をとり人間ドックを受けることになった。最新の人間ドックは快適そのもの。受けた検査のほとんどに問題はなかったが、肺ドックで受けた低線量CT検査でイエローカードが出てしまった。
「まさか肺がん?」と恐怖を感じたが、検診医の説明は「気腫性変化があります。初期のCOPD、慢性閉塞性肺疾患の疑いです。呼吸器内科の受診をお勧めします」というものであった。
巣山さんには、COPDは長年タバコを吸い続けた高齢者がかかり、死に至ることもある恐ろしい病気というイメージがあった。すでにタバコをやめている自分がそう診断されるのは不本意でもあり恐怖でもあったが、呼吸器内科の担当医の話は予想外なものだった。
「最近、低線量CT検査の普及で肺の気腫性変化が検出され、COPDが早期に診断されるようになったのです。これから経過を見ていきますが、巣山さんの場合、もし進行したとしてもタイミングよく治療を開始すれば、日常生活に支障なく天寿を全うすることができますよ」
いつもと違う風邪の症状がきっかけで受けた人間ドックのおかげで、リタイア後の生活に支障をきたしたであろうCOPDのリスクを回避できた。巣山さんは心のなかで妻に感謝した。
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