私たちの体は異変を生じたとき、さまざまなサインを発する。それは、痛み、吐き気、出血などの自覚症状のこともあれば、健康診断の検査結果に表れることもある。このような体から得られる情報をどう理解するかが健康を守るために重要だ。「世界緑内障週間」に合わせてお届けする今回のテーマは、40歳以上の20人に1人が発症し、失明の原因にもなる「緑内障」だ。

Episode メガネの作り替えがきっかけで緑内障が発覚!
コンサルティング会社に勤務する森山一博さん(48歳)は、最近、遠くの景色がぼやけて見えたり、長時間パソコン作業をしたときに目が疲れるようになった。これは同年代の同僚もよく訴えていることなので、「老眼が進んでいるせいだろう、そろそろメガネを作り替えた方がいいかな」と考えた。
森山さんは、仕事が定時で終わった日、いつもの眼鏡店を訪れた。店では認定眼鏡士が森山さんの視力や老眼の進行具合などを丁寧に検査。そして、いくつかの遠近両用メガネを提案すると同時にこう話した。「森山さんの場合、メガネで矯正しても視力が0.8程度しか出ていません。メガネをお作りになる前に、一度、眼科を受診された方がよいと思います」
驚いた森山さんは、翌日、職場の近くの眼科を受診した。眼科医は、視力検査、屈折検査、眼圧検査、眼底検査などを実施した上で「緑内障が進んでいる可能性があります。視野検査を行いましょう」と言った。
視野検査では、まず検査装置に顔をつけ正面をじっと見る。そして、見える範囲に光のスポットが見えたと感じたら、ボタンを押すという作業を繰り返すもので、検査には30分ほどの時間がかかった。
すべての検査を終えて眼科医は「緑内障が少し進んだ状態です。ご自身では気づいていらっしゃらないと思いますが、視野のなかに暗点といってモノが見えていない領域が少しありました」と説明した。
突然の宣告に森山さんは、これまで職場の健診で眼圧検査など目の検査は定期的に行ってきたことなどを主張した。
それに対して眼科医は「緑内障の進行には眼圧が深く関わっていると考えられていますが、日本人では眼圧が正常範囲内なのに進行する正常眼圧緑内障が圧倒的に多いのです。でも、森山さんは早く気づいてよかったです。失った視野は回復できませんが、これから進行を抑える治療を続けていきましょう」と話した。
早期発見につながった認定眼鏡士のアドバイスに対する感謝の気持ちと、これからずっと続く緑内障治療への不安。森山さんは複雑な思いだった。