「食事中にむせてしまう」「痰が絡みやすい」名医が回答
国立病院機構東京医療センター 耳鼻咽喉科音声外来の角田晃一先生(後編)
伊藤和弘=ライター
「健康Q&A」では、医師や研究者、アスリート、トレーナーなど、健康・医療のエキスパートの方々が月替わりで登場。あなたの疑問やお悩みに答えます。
2021年12月の回答者は「声」や「のど」の病気に詳しい国立病院機構東京医療センター耳鼻咽喉科音声外来の角田晃一先生です。前編では主に「声の不調」に関する質問に答えていただきました。引き続き後編では、誤嚥(ごえん)や痰(たん)など、「のどの不調」について答えていただきましょう。
国立病院機構東京医療センター 耳鼻咽喉科音声外来 角田晃一先生Q&A
Q 1
Q 2
Q 3
Q 4
Q 5
Q 6
Q 7
Q 8
Q 9
Q10
Q11
編集部 後編最初の質問は「誤嚥」です。高齢になると食べ物や唾液を誤って気管に入れてしまい、むせやすくなります。それが原因で起こる誤嚥性肺炎で亡くなる方も多く、2020年の「人口動態統計」によると4万2746人と、死因の第6位に入っています。
食事中にむせることがある
最近、食事中やつばを飲み込むとき、むせることがあります。嚥下機能を良くする方法はありますか? ときどき食道の左右をマッサージするのですが、けっこう痛いです。(66歳女性)
角田 むせるというのは誤嚥が起きているわけで、誤嚥性肺炎を起こすリスクが高くなっている兆候です。唾液の水滴などの異物が気管に入っているのではないかと思います。こうしたとき、異物を出そうとしてむせたり、せき込んだりするのです。

声帯にはものを飲み込むとき気道にフタをする役割もあるので、声帯が衰えてピタッと閉じなくなると、気管に唾液や食べ物が入りやすくなります。前編でも話した「あー」と声を出すテストをやってみてください。男性で15秒以上、女性で12秒以上続けば正常ですが、10秒続かないようだったら、声帯が衰えてしっかり閉じなくなっている可能性があるので、耳鼻咽喉科に行ったほうがいいでしょう。
声帯の衰えのほか、声帯の乾燥にも要注意です。年をとると唾液や粘膜を守る粘液の分泌が減ってきます。唾液など分泌物が減ると声帯はもちろん、飲み込みに関わる舌や口腔、咽頭が乾燥して動きにくくなるので、誤嚥を起こしやすくします。まめに水を飲むなど、口の中の加湿を心がけることが大切です。
また、飲み込む力が衰えた高齢者は、水や薬を飲むときに上を向きがちですが、そうすると気道に入ってむせやすくなります。飲み込むときは逆に「あごを引く」ことが大切。昔のビールのテレビCMはジョッキを傾けて首を反らして豪快に飲んでいたものですが、今はそんなことしないでしょう。CMが原因で誤嚥になっては困りますよね。
編集部 一見、上を向いたほうが飲み込みやすく思えるのですが、これは誤嚥を起こしやすい姿勢なんですね?