「会話が減ったら声が出にくくなった」「美声を取り戻したい」名医が回答
国立病院機構東京医療センター 耳鼻咽喉科音声外来の角田晃一先生(前編)
伊藤和弘=ライター
「健康Q&A」では、医師や研究者、アスリート、トレーナーなど、健康・医療のエキスパートの方々が月替わりで登場。あなたの疑問やお悩みに答えます。
2021年12月の回答者は「声」や「のど」の病気に詳しい国立病院機構東京医療センター耳鼻咽喉科音声外来の角田晃一先生です。
国立病院機構東京医療センター 耳鼻咽喉科音声外来 角田晃一先生Q&A
Q 1
Q 2
Q 3
Q 4
Q 5
Q 6
Q 7
Q 8
Q 9
Q10
Q11
編集部 東京医療センター耳鼻咽喉科音声外来の角田晃一先生は声帯研究の第一人者として知られ、テレビの健康番組にもよく出演していらっしゃいます。そんな角田先生に向けて、読者からの質問を募集したところ、実に多くの質問が寄せられました。それに対する角田先生の回答を、前編・後編の2回に分けてお届けします!
角田 たくさんの質問をいただき、身の引き締まる思いです。何でも聞いてください。
編集部 よろしくお願いします。ではさっそく、最初の質問です。
人と話す機会が減ったら声を出しづらくなった
一人暮らしになってから人と話す機会が減って、たまに会話をすると声がかすれて大きな声を出せません。耳鼻咽喉科で診てもらったら、加齢で声帯が老化していると言われました。(67歳男性)
編集部 声帯は加齢で老化するのですね。声帯が老化すると、どのような症状が現れるのでしょうか?
角田 声帯は筋肉の上を結合組織や粘膜が覆った構造です。年をとってくると「声帯萎縮」といって声帯がやせて縮むため、2枚ある声帯がきちんと閉じず、隙間ができるようになってしまいます。その結果、声が出しづらくなったり、かすれたりするのです。さらに、食べ物や唾液が気管に入りやすくなり、誤嚥(ごえん)性肺炎を起こすリスクも高くなります。ものを飲み込むときは閉じた声帯と喉頭蓋(こうとうがい)が気管の入り口をブロックして流入を防ぐのですが、声帯が萎縮して隙間ができると、そこから食べ物や唾液が気管に入りやすくなるわけです。

(下)ものを飲み込むときは閉じた声帯と喉頭蓋が気管の入り口をブロックして食べ物や唾液の流入を防ぐが、声帯に隙間があると、そこから食べ物などが気管に入りやすくなる。原画=123RF