「認知症予防のためにもっと長く眠るべき?」「夜中の尿意を抑えたい」 名医が回答!
秋田大学大学院精神科学講座教授の三島和夫先生(後編)
堀田恵美=ライター
「健康Q&A」では、日経Goodayの連載や特集でおなじみの医師や研究者、アスリート、トレーナーなど、健康・医療のエキスパートの方々が月替わりで登場。あなたの疑問やお悩みに答えます。
2021年11月の回答者は、秋田大学大学院精神科学講座教授の三島和夫先生です。
睡眠医学のエキスパート 三島和夫先生Q&A
Q 1
Q 2
Q 3
Q 4
Q 5
Q 6
Q 7
Q 8
Q 9
Q10
Q11
編集部 睡眠医学のエキスパートである秋田大学大学院精神科学講座教授の三島和夫先生に読者からの質問に答えていただく「健康Q&A」の後編です。最初の質問は、睡眠時間を短くしたい、という方からです。
睡眠時間を短くしたい
子どものころから10時間以上の睡眠が必要な長時間睡眠者です。睡眠時間を短縮するための方法はないでしょうか。(32歳女性)
編集部 睡眠時間を短くしたいというのは珍しいですね。
三島 前編の「日中の眠気やだるさに何か対策はありますか」という質問でも触れましたが、必要睡眠時間は人によって異なり、睡眠時間が非常に短くても大丈夫なショートスリーパーの人もいれば、この方のように長時間睡眠が必要なロングスリーパー(長時間睡眠者)の人もいます。あくまでも個人の特性で、異常なわけではありません。
ただ、社会人になると困ることも多いと思います。この方も30代ですが、お勤めなどをしていると、朝、決まった時間には起きなくてはなりませんし、小学生のときのようにいつでも21時に就寝できるわけでもないでしょう。睡眠外来でも、ロングスリーパーであるためにいつも睡眠不足でつらくて困っているという方をときどき見かけます。
残念ながら今の医学で睡眠を短くする方法として確立されたものはまだないのです。少しずつ睡眠時間を短くしていく「短時間睡眠法」について耳にしたことがあるかもしれませんが、あれも、週末などにどーんと爆睡してしまったりすると、振り出しに戻ってしまいます。長年、睡眠の研究者が睡眠時間を短縮する方法を模索してきましたが、睡眠時間は体質で決まっている部分が大きいため、短時間で短くすることはできないようです。
編集部 睡眠時間を短くできないのであれば、何かしら少しでも過ごしやすくする方法はないのでしょうか。
三島 現実生活での対処法としては、日中の眠気はやはり仮眠などで一時的にでも取り払うしかないでしょう。出勤日は、帰宅後できるだけ早めに眠りにつけるよう、夜は部屋の明かりのトーンを下げたり、パソコンやスマホなどをできるだけ見ないようにして、クールダウンの時間を早めに設定し、10時間眠れるのであればそうする。10時間が無理でも、23時から朝7時までの8時間睡眠だけはなんとしても確保して、足りない分は週末に寝だめして取り戻す、といった自分なりの工夫を見つけていくしかないかと思います。
週末の寝だめというのは一般的には良くないとお伝えしていますが、睡眠時間が十分にとれないロングスリーパーの方であれば、苦肉の策として休みの日に睡眠不足を解消するのは致し方ないことです。
編集部 休日の寝だめで睡眠不足を解消するしかないのは大変ですね。
三島 なお、日中に強い眠気が伴う場合は、過眠症という病気を併発している可能性もあります。そういう場合は睡眠の専門医に一度ご相談ください。睡眠時間は短くできませんが、眠気を改善できる治療薬はあります。
残念ながら今の医学で眠気を短くする方法はまだ見つかっていません。できるだけ睡眠時間を長くとり、足りない分は寝だめで補うなどして対処していきましょう。日中の眠気が強い場合は、一度睡眠の専門医に相談を。
編集部 ありがとうございました。次の質問に行きましょう。