「寝付きが悪くてつらい」「いびきで病院に行くのは大げさ?」 名医が回答!
秋田大学大学院精神科学講座教授の三島和夫先生(前編)
堀田恵美=ライター
「健康Q&A」では、日経Goodayの連載や特集でおなじみの医師や研究者、アスリート、トレーナーなど、健康・医療のエキスパートの方々が月替わりで登場。あなたの疑問やお悩みに答えます。
2021年11月の回答者は、秋田大学大学院精神科学講座教授の三島和夫先生です。
睡眠医学のエキスパート 三島和夫先生Q&A
Q 1
Q 2
Q 3
Q 4
Q 5
Q 6
Q 7
Q 8
Q 9
Q10
Q11

編集部 睡眠医学のエキスパートである秋田大学大学院精神科学講座教授の三島和夫先生に、読者からの質問に答えていただく「健康Q&A」の前編です。よろしくお願いします。
三島 一般論としてお答えする部分も多いかと思いますが、ご参考になればと思います。
編集部 最初は、寝そこなうと何時間も寝付けないという方からの質問です。
寝そこなうと2~3時間寝付けなくてつらい
布団に入ってもなかなか寝付けないので悩んでいます。布団に入ってすぐに眠気が来たときにそのまま眠れればいいのですが、意識しすぎるのか、眠気を逃してそのまま2~3時間眠れないことがよくあります。どうすればいいでしょうか。(51歳男性)
編集部 タイミングを逃すと寝付けなくなってしまうとお悩みの方ですね。同じような質問は多数いただいています。
三島 この方のように、寝ようと思って布団に入ったけれども、意識しすぎて午前2時、3時くらいまで眠れないというのは不眠の典型です。寝ようと身構えなければリビングなどでうとうと寝入ってしまうのに、いざ布団に入って寝ようとすると目が冴えて眠れなくなる。そのため、不眠症は「不眠恐怖症」とか「寝室恐怖症」とも言われています。
寝付けない理由のひとつに、緊張があります。寝床に行っても寝付けないという体験を繰り返すうちに「また今日も寝付けないんじゃないか」と不安になり、条件反射的に寝床に入ると緊張してしまう人がいるんです。この方もきっとそうではないでしょうか。
編集部 眠らなきゃと思うことで緊張して、かえって寝付けないことがあるのですね。
三島 はい。緊張すると脳が覚醒してしまうので寝付けなくなってしまうんです。問題は、どれくらいの頻度で寝付けない日があるかです。たまに寝そこなうくらいであれば、開き直ってまたソファなどに戻ってリラックスして過ごし、眠気がくるのを待つといいでしょう。あまり気にしすぎるとかえって不眠恐怖症になってしまいます。
一方、週に3日以上こういった寝付けないなどの不眠症状があって、日中に眠気や倦怠感があるようであれば、医療機関では「不眠症」と診断がつきます。ただし、不眠症だからといってすぐに治療が必要なわけではありません。その状態が3カ月以上続くようであれば、体への影響が出る可能性も出てくるので何かしら医療を受けた方がいいですよ、ということになります。
編集部 週に3日以上、3カ月というのが目安になるのはどうしてですか?
三島 例えば、職場環境や家庭環境の変化などによって一時的に不眠に陥ることもあります。そういった一時的な不眠の多くは自然に改善(寛解)します。一方、3カ月以上持続する不眠は慢性不眠症(慢性不眠障害)と呼ばれ、かなり体調も悪くなってしまうほか、治療をしないとなかなか治らないことがわかっているからです。
こういった慢性不眠症では、背景にうつや不安障害、アルコール依存などがある場合も少なくありません。重症の場合には薬物療法が必要になることもあります。 正しい診断と治療のために早めにかかりつけ医に相談したほうがいいでしょう。