「血管年齢を若返らせるにはどうすればいい?」 読者の悩みに名医が回答!
循環器系のエキスパート・池谷医院 院長 池谷敏郎先生(前編)
伊藤和弘=フリーランスライター
「健康Q&A」では、日経Goodayの連載や特集でおなじみの医師や研究者、アスリート、トレーナーなど、健康・医療のエキスパートの方々が月替わりで登場。あなたの疑問やお悩みに答えます。
今月の回答者は「血管」や「血液」の記事で日経Gooday読者にもおなじみ、テレビ出演も多い池谷医院(東京都あきる野市)院長の池谷敏郎先生です。
池谷医院 院長の池谷敏郎先生 Q&A
Q 1
血管の硬さは体のどこかを触って調べることはできますか?
Q 3
血管年齢を若くするには、どのような生活習慣が大切ですか?
Q 5 足の冷えに悩んでいます。(後編)

編集部 循環器系のエキスパートとしてテレビ出演も多く、「血管先生」の異名も持つ池谷医院(東京都あきる野市)院長の池谷敏郎先生は、日経Goodayでも動脈硬化や血液に関する記事で何度かご登場いただいています。
そんな池谷先生に向けて、日経Goodayで読者からの質問を募集したところ、いつにも増して多くの質問が寄せられました。たくさんのご質問ありがとうございました。池谷先生の回答を、今回と次回の前後編に分けてお届けします!
池谷 よろしくお願いします。
編集部 ではさっそく、最初の質問です。
血圧とコレステロールが高く、動脈硬化が進行しているのではないかと気になっています。血管の硬さは自分で体のどこかを触って調べることはできますか? (40代男性)
編集部 今回、最も多かったのは「動脈硬化」や「血管年齢」に関する質問でした。そもそも高血圧や脂質異常症などの生活習慣病がなぜ問題になるかといえば、動脈硬化を進めるため。動脈硬化が進行すると、脳卒中や心筋梗塞で命を落とすリスクが高くなります。
会社などで受ける健康診断でも、血圧やコレステロール値は調べますが、ズバリ動脈の硬さを教えてくれることは基本的にありません。自分で動脈硬化の具合を知ることはできないのだろうか、という質問です。
池谷 残念ながら、脈拍を調べるのとは違って「動脈の硬さ」は外から手で触ってみても分かりません。専用の測定機器で測るしかないですね。
医者と患者さんとで認識がズレている
池谷 従来の健診は、動脈硬化ができあがる材料(動脈硬化を進行させる要素)をチェックしていました。コレステロール、高血圧、タバコやストレスや寝不足といった悪しき生活習慣などです。
ところが、血管はもの言わぬ臓器で、破れたり詰まったりするまで無症状なんですよ。動脈硬化を進める生活習慣病も同様に無症状です。血圧やコレステロール値が健診で引っかかっても、本人は痛くもかゆくもないでしょう。医者に注意するように言われても「交通事故に気をつけましょう」と言われているようなものです。ほとんどの人は「自分は平気だろう」と思って、前向きに治療しようとは思わないんですね。
編集部 確かにそうですね。多くの方は、「血圧が高いと動脈硬化が進み、脳卒中や心筋梗塞のリスクが高まる」と頭では分かっています。しかし生活面では何の不自由もないので、本気で血圧を下げようとは思いにくいですよね。
池谷 我々医者は実際に血管の病気で倒れる人を見ていますから、この状態だと危険だということをよく分かっているんですが、患者さんは危険な状態にさらされてるという意識を持てないんです。すると酒を減らさない、タバコをやめない、メタボを改善しようとしないといったことになってしまう。
医者はよく「病識」という言葉を使います。病識とは、自分が病気であるという自覚を持ち、自分の病気について正しく認識し、適切に対応することを指すのですが、患者さんはなかなかそういう意識が持てません。患者さんと医者はそこがズレているのです。
患者さんの病識を高めるには、血管側から病気を伝える方法論がいいのではないか――。そこで「血管年齢」という指標が出てきたんです。一般に年を取るほど血管は硬くなっていく。血管が何歳相当の硬さかを示すものが血管年齢です。単に「動脈硬化が進んでいる」というより、「あなたは40歳ですけど、血管年齢は50代ですよ」と言われたほうが分かりやすいでしょう。