「血糖値がなかなか下がらない」「自分で血糖値を測れる?」名医が回答!
国立国際医療研究センター糖尿病研究センター長の植木浩二郎先生(前編)
伊藤和弘=ライター
「健康Q&A」では、日経Goodayの連載や特集でおなじみの医師や研究者、アスリート、トレーナーなど、健康・医療のエキスパートの方々が月替わりで登場。あなたの疑問やお悩みに答えます。
2021年10月の回答者は、国立国際医療研究センター糖尿病研究センター長の植木浩二郎先生です。
糖尿病のエキスパート 植木浩二郎先生Q&A
Q 1
Q 2
Q 3
Q 4
Q 5
Q 6
Q 7
Q 8
Q 9
Q10
Q11
Q12
Q13
編集部 国立国際医療研究センター糖尿病研究センター長の植木浩二郎先生は、日本糖尿病学会の理事長も務める糖尿病のエキスパート。日経Goodayでも「怖い病気の予兆」などの記事にご登場いただいています。そんな植木先生に向けて、読者からの質問を募集したところ、実にたくさんの質問が寄せられました。それに対する植木先生の回答を、前編・後編の2回に分けてお届けします!
植木 よろしくお願いします。たくさんの質問に答えたいと思います。
編集部 よろしくお願いします。ではさっそく、最初の質問です。
HbA1cが下げ止まってしまいました
HbA1c(ヘモグロビンA1c)が9.2%と高い値になり、投薬治療を始めました。現在は「メトアナ配合錠HD」を1日2錠服用しており、5.7%まで下がってきましたが、ここ3カ月ほど下げ止まっています。夕食後には1時間程度歩き、1日おきにスクワットも行っていますが、さらに数値を下げる方法はありませんか? このまま薬を飲み続けなければいけないのでしょうか。 (57歳男性)
編集部 HbA1cは、最近1~2カ月間の血糖値を反映する指標で、6.5%以上になると「糖尿病の可能性が強く疑われる」状態だとされています。ヘモグロビンとは赤血球の中にある酸素を運ぶたんぱく質のことで、HbA1cはブドウ糖と結合しているヘモグロビンの割合のことですね。この方は、薬を飲んだり運動をしたりして下がってきたけれど、3カ月ほど下げ止まっていることに悩んでいるようです。
植木 下げ止まっているとのことですが、今よりも下げる必要があるのかどうか、ですよね。HbA1cはもう血糖コントロール目標の範囲内にあるわけですから、さらに下げるよりもこれを維持することが重要でしょう。運動も適切にやっておられるようですし、飲んでいる薬も「DPP-4阻害薬・ビグアナイド薬配合剤」というタイプで、低血糖を起こす心配が少ないので、今の状態をキープできればいいのではないかと思います。
目標 | 血糖正常化を 目指す際の目標 | 合併症予防 のための目標 | 治療強化が 困難な際の目標 |
HbA1c(%) | 6.0未満 | 7.0未満 | 8.0未満 |
編集部 なるほど。この場合、血糖コントロール目標としては6%を切れば十分なのですね。質問者の方は、もっとHbA1cを下げれば薬を飲むのをやめられるのではないか、と考えているのかもしれません。薬を飲むことに抵抗がある人は少なくないので。
植木 そのようですね。ただ、現在のHbA1cは薬と運動など生活習慣の改善で下がっているわけです。運動や食事をもっと頑張って、DPP-4阻害薬だけ、あるいはビグアナイド薬だけにすることもできるかもしれませんが、全部やめてしまうと血糖コントロールが悪化すると思います。今の血糖コントロール状態はとても良いので、これを続けていくのがいいのではないでしょうか。