「耳かきはしない方がいいって本当?」「耳鳴りが治らない」…名医が回答!
西横浜国際総合病院耳鼻咽喉科部長の河野敏朗先生(後編)
伊藤和弘=ライター
「健康Q&A」では、日経Goodayの連載や特集でおなじみの医師や研究者、アスリート、トレーナーなど、健康・医療のエキスパートの方々が月替わりで登場。あなたの疑問やお悩みに答えます。
2021年8月の回答者は「難聴」や「耳の疾患」に詳しい西横浜国際総合病院耳鼻咽喉科部長の河野敏朗先生です。後編では耳鳴り、耳かきの是非、蜂窩織炎(ほうかしきえん)や耳管開放症などの病気についての質問に答えていただきました。
西横浜国際総合病院耳鼻咽喉科部長 河野敏朗先生Q&A
Q 1
Q 2
Q 3
テレビや会話が聞き取りにくい。健診では異常がありません(前編)
Q 4
補聴器を買うときは、何に気をつけて選べばいいですか?(前編)
Q 5
Q 6
Q 7
Q 8
Q 9
Q10
編集部 後編最初の質問は「耳鳴り」です。今回、耳鳴りに関するお悩みはとりわけ多く、「受診した方がいいですか?」「運動で解決できないか」「心労が原因?」など、たくさんの質問が寄せられました。
キーンという耳鳴りが10年ほど続いています
両耳でキーンという耳鳴りが10年ほど続いています。発症当時は通院もしていました。最近、片方だけ音量が急に大きくなったり、耳栓をされたようになったりします。何らかの病気の可能性はあるでしょうか? (57歳男性)
編集部 この方は通院もされていたようなので、そのときの聴力検査では異常が見つからなかったということかと思います。それにしても耳鳴りに悩んでいる方が多くて驚きました。想像以上にQOL(生活の質)への影響が大きいのでしょうね。そもそも耳鳴りとはどんな現象で、どのような原因から起こるのですか?
河野 耳鳴りは、音の処理を行う脳の部位が過剰に反応して、音が鳴っていると勘違いしてしまうために生じる雑音です。耳鳴りの原因は非常にたくさんあります。突発性難聴、メニエール病、中耳炎、寝不足、ストレス、薬の副作用、高血圧、自律神経失調症、脳神経の疾患、大きな音を聞いた後など、挙げていけばきりがないくらいです。耳鼻咽喉科を受診しても、原因を特定するのは簡単ではありません。
耳鳴りの主な原因
突発性難聴・メニエール病・中耳炎・外耳の病気・脳神経の疾患・睡眠不足・ストレス・薬の副作用・高血圧・自律神経失調症・大きな音にさらされた後 など
編集部 今回いただいた質問の中にもありましたが、ストレスや寝不足でも起こるわけですね。
河野 はい。ストレスや薬の副作用など、原因がはっきりしている場合なら、それが解消されれば治ることはあります。また、突発性難聴などで起こる急性の耳鳴りは治りやすいのですが、慢性の耳鳴りになると治療が難しいのが現状です。耳鳴りがある場合、まずは大きな病気がないか、耳鼻咽喉科を受診してもらうことが第一歩。聴力、鼓膜、内耳などを調べ、はっきりした原因が分からなければ慢性の耳鳴りということになります。
編集部 運動で耳鳴りが改善することはありますか?という質問もありました。
河野 メニエール病などの場合は、有酸素運動をすると改善することが多いです。治療には漢方薬もよく使われます。しかし、どんな耳鳴りにも効くというわけではありません。慢性の耳鳴りは完治しにくく、決定的な治療法がないのが現状です。そのため、完治を目指すのではなく、「耳鳴りに慣れる」ことを目指す治療も行われています。
編集部 耳鳴りに慣れるような治療と言いますと?